ミイルは何を目指すのか
ミイルがスタートしてから一年ちょっと経ちました。色々な方とお話ししてきましたが、これまでで一番聞かれたのは「ミイルは外食を狙いに行くんですか?それとも家メシなんですか?」という質問です。
今までは聞かれるごとに精一杯の言葉を使って説明をしてきたのですが、これ、そろそろきちんとまとめた方が良いと思いました。というのは、この点に対する回答こそが、今後のミイルの大きな方針になるからです。
そこで今回は、「ミイルが目指すもの」について簡単に説明しておきたいと思います。
ミイルが目指すのは「人に一番近いグルメサービス」
まず最初に結論から言うと、ミイルが目指すのは「人に一番近いグルメサービス」です。「ユーザーを一番知っているグルメサービス」と言い換えても良いかもしれません。
つまり、ユーザーさんの食生活に寄り添い、ユーザーさんが日々何を食べているのか、一人一人の人たちがどういう食生活を送っているのかを知っているサービスということです。そこには、外食とか家メシという区別は存在しません。外で食べようが家で食べようがお弁当だろうが、その人にとっては全てが大事な食事です。それらの食事が全て集まって初めて、その人の「食生活」であり、その人の人生なのです。
これは、これまで存在しなかった、全く新しいグルメサービスのジャンルになると思っています。
では、具体的に何が今までのサービスと違うのか。それをもう少し詳しく説明してみます。
今までのサービスの主役はユーザーじゃなかった
世の中にはたくさんのグルメサービスがあります。外食に特化したクチコミサイトや、レシピに特化したサービス、お取り寄せや出前を専門に扱うサイトもあります。
一見するとそれぞれ全く違うサービスに見えますが、一つだけ全てのサービスに共通する特徴があります。それは、「食べる人ではなく、お店や料理が主役になっている」ことです。
例えば外食向けのサービスでは「お店」が主役です。お店が一つ一つページを持ち、そのお店のメニューや営業時間、あるいはそのお店に対する評価などが並びます。もちろん、サービスによってはユーザーさんごとにページが設けられていて、そのユーザーさんが過去に投稿したレビューなどを一覧することもできますが、しかしその情報はサイトの主役ではありません。
あるいはレシピサイトでも同様です。レシピサイトの主役はあくまでも「レシピ」。それを投稿したユーザーさんや、そのレシピで実際に料理してみたユーザーさんが主役になるわけではありません。
こうしてみていくと、今までのグルメ系サービスではおしなべてお店や料理が主役だったことに気づきます。ユーザーさんは、それぞれのお店やレシピ情報を投稿したり評価したりしますが、そういった一人一人のユーザーさんが「どういう食生活を送っている人なのか」「どういう食の嗜好を持っているのか」はあまり顧みられません。
言ってみれば同じ「じろう」でも、毎日ラーメン二郎を食べている人と、毎日すきやばし次郎に通っている人では、まるっきり食に対する価値観は違うはずです。同様に、週7日外食する人と、月に一回しか外食しない人では、飲食店に求めるものは全く異なるはずです。しかし、仮にそういった全く異なる二人が同じお店のレビューを投稿をしたとしても、ユーザーさん一人一人の嗜好の違いは、レビューを読む側はあまり意識することはありません。
もちろん、これは決して悪いことではありません。サービスとしてのマネタイズを考えたとき、外食市場と家メシ市場はまるっきり対象もアプローチも異なります。ですから、きちんとサービスが収益を上げて長く継続していくためにも、課金する対象を明確にし、外/ウチのフォーカスを絞り込み、店舗やレシピを主役として情報を充実させていくことはとても理に適った手法です。
しかし、一方では、「ユーザーさんに対する深い理解」が置きざりになってしまうのも事実だと思うのです。
みんなが「検索」している
いま、僕らがお店を探したりレシピを探すとき、どういう行動を取っているでしょうか。おそらくそれぞれの専門サイトにアクセスして「検索」をしているはずです。
僕が札幌に行ったとき、「せっかくなので美味しい味噌ラーメンを食べたいな」と思ったとします。すると、まず僕はクチコミサイトにアクセスし、「札幌 味噌ラーメン」と検索します。そして表示された結果からつけ麺を外し(僕は汁麺派です)、魚介ダシ系を外し(豚骨や鶏ガラ派です)、さらにレビューをいくつか読んで(一つだけ読んでもアテにならないので)… こうして書いてみると、結構な手間をかけるものですよね。で、最後は面倒になってTwitterやFacebookあたりで「誰か美味しいところ教えて」とか聞いたりする。そこまで頑張って探した割には、最後は「ここが自分の好みにドンピシャかどうか確信はないけど、行ってみるか!」とエイヤで飛び込んでいると考えると、あまり効率の良い方法とは言えません。
これが今の僕らにとってはふつうの行動になっているのですが、食べログだけでも月間4,000万人もの人たちがアクセスし、そのうちのかなりの人数が検索をしているってのは、これはすごいことだと思うのです。一人一人の検索に費やされている時間を足し上げたら相当なものでしょう。この状況って、みんなが検索ウィンドウに向かって「僕の好みはこういう料理で、こういうのは好きじゃないんです」「こういうお店はないでしょうか」と一生懸命伝えているわけです。そして表示される結果に対しては、一件ずつ評価を読んだりと手間をかけて取捨選択しています。
検索しなくていい世界
そこで僕が想像するのは、「検索しなくていい世界は作れないんだろうか」ってことです。
僕が札幌に行ったら「ラーメン食べたい」と聞くだけで、僕好みのお店をピックアップしてくれる。つけ麺も魚介ダシもフィルターして、ホテルのそばの動物系こってり目な味噌ラーメンをオススメしてくれるようなサービスって作れないんでしょうか。
なぜ今はそれができないかというと、結局のところ既存のグルメサービスはどれも「お店/料理/レシピ/食材のことはすごく詳しいけれど、ユーザーさん一人一人のことは全然理解できていない」からだと思うのです。だからこそ、ミイルはユーザーさんを一番理解しているサービスにしたいと思っているのです。
これは実はユーザーさんだけでなく、飲食店や食品メーカーにとっても価値のある話です。食は極めて主観的なもので、全てが好き嫌いだけで判断される数少ない商品です。その時に一番重要になるのが「相性」。この相性が合わない場合は、お客様が損するだけでなく、店舗や企業にとっても不幸な結果になります。提供する側からしても、自分たちの料理や食材の価値を認めてもらえる人と出会えてこそ、ファンが生まれて商売が成り立つというものです。しかし現状は、そういうお客様と上手に出会う方法はほとんどありません。現実的には「お客様の側だけが一生懸命探している」状況が続いているわけで、相性のよいユーザーさんとお店や商品が正しくマッチングする機能を誰も提供できていない、というわけです。(だからこそ、様々なクーポン手法や送客方法が生まれては消えているのだと言えます)
ミイルに託す未来
では、そのマッチング機能を提供できたら、もっとみんなにとってハッピーな世界が作れるんじゃないか?
僕がミイルに託したいのは、そんな未来です。ゼロにするとまでは言わなくても、今よりもずっと「検索する必要」の少ない世界です。そしてそれを実現するためには、僕らは誰よりもユーザーさん一人一人の食の好みを知っているサービスを作らなくてはなりません。
だから、ミイルはそんな世界の実現に向かって、まずは一人一人の食の好みが蓄積されていくような仕組みを作りからスタートしています。自分の食行動を残していけば行くほど、自分の食の好みに沿ってお店探しやレシピ、食材探しのサポートが得られるようになる。ミイルに向かって「お腹すいた」といえば、今自分が食べたいであろうもの、自分が食べるべきものが提示される。いつかはそんな世界を作りたいと思っているのです。
食の記録は、そのまま自分の生きた証でもあります。実際、ミイルに残っている料理の写真を振り返れば、音楽と同じように、それを一緒に食べた人、そこで交わした会話まで思い出すことが少なくありません。ミイルは食の思い出を残していくことで、ユーザーさん一人一人の生きた証を残しながら、その一人一人の食生活を豊かにしていくお手伝いをするサービスになっていくというわけです。
ウチメシも外食もお取り寄せもデリバリーも、全部がその人の人生です
だから、ミイルは外食とかウチメシという区別なしに、「その人の食生活」を全て記録してもらえるサービスにしたいと思っています。理想主義かもしれません。マネタイズの面から考えれば、当面は苦労が続くかもしれません。でも、今「ユーザーを理解しているグルメサービス」が一つも存在しない以上、そこにチャレンジするのは大きな意義があることだと思っています。実際、ミイルは今でも外食と家メシの両方が投稿され続ける数少ないサービスになっています。それこそが最大の特徴であり魅力になるようなサービスを作ることこそが、僕らの最大のチャレンジなのだと思います。
もちろん、失敗する可能性も少なくありません。しかし、もしも僕らのチャレンジが成功したら、その時にはグルメサービスのパラダイムがガラッと変わるかもしれません。おそらく既存のグルメサービスを破壊するようなことはないにしても、少なくとも、既存サービスと競合するのではなく「補完し合う」メディアとして、全く新しい立ち位置を持ったサービスになることは間違いないでしょう。そのとき、まさに僕らが目指している「人と食の幸せな出会い」が実現し、食文化はもっと豊かで楽しいものになるはずです。それを目指して、ミイルはこれからも進化していきます。