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トレタで働くということ

この記事は トレタ Advent Calendar 2018 の25日目です。

株式会社トレタ、代表の中村です。
サーバーサイドの @m_nakamura145 から「大トリは任せた」という無茶ぶりを受けまして、初のトレタ・アドベントカレンダー参加です。
そして本ブログも3年半以上ぶりに更新です。


さて。

みなさんが日々コードを書いたり、デザインしたりしている目的は何でしょうか。
スキルを高めるため。お金を稼ぐため。世の中にないものを作るため。有名になるため。自分の創造欲求を満たすため。よりよい世界を作るため。
人によって、その動機は様々だと思います。
しかしもしあなたが「人を幸せにするため」にコードを書きたいと思っているなら、トレタはとても良い場所かもしれません。今回は、そんなことを書いてみたいと思います。


トレタは2013年に創業しました。ミッションは「食の仕事を、おもしろく」。トレタは、外食産業の課題を解決するために生まれた会社であり、強烈な「ミッションドリブン」の会社だと言ってよいでしょう。
僕らは、常に飲食店の現場や経営に存在する問題を一つひとつ丁寧に解決することを積み重ねてきました。


僕らが創業した当時は、飲食店のほぼ100%が予約管理を紙で行っていました。お店に行ってトレタの紹介をすると「そもそも、いま紙で無料で管理できているものを、なんでわざわざお金を払ってそんなアプリに切り替えないといけないんだ」と言われるのが当たり前でした。
しかし実際にiPadを取り出し、トレタでどんなことをができるのかを見ていただくと、多くの人が驚き、そして「これはいい!」と言ってくれて、そして目を輝かせて契約してくれる。
僕らはそうやって、それまで世の中に存在しなかった「予約台帳」というクラウドサービスのカテゴリーそのものを作り上げてきました。

絶望的に面倒で、なおかつ1個のミスも許されないという極めてストレスフルだった予約管理の仕事を劇的に変え、その仕事を簡単にするだけで満足するのではなくて、さらには「トレタを触ることが楽しいから、予約管理の仕事自体が楽しい仕事になった」「これまで予約管理は苦痛そのものだったけれど、トレタを触っている時間は幸せな時間に変わった」と言ってもらえるレベルまで仕事体験を引き上げる。
これはまさに「食の仕事を、おもしろく」の一つの形と言えるでしょう。

こんな野心的な試みを実現する原動力になったのは、つねに「飲食店をハッピーにしたい」というメンバー一人ひとりの想いです。デザインして理想を描く人、コーディングしてそれを実現する人、その価値をお店に正しく伝えて広めていく人、お店と伴走して導入成果を高めていく人、そしてそういうメンバーそれぞれを裏で支えていく人。
メンバー各々で持ち場は違っても、みんなが飲食店の幸せのために同じ方向を向いて仕事をしている。それがトレタという会社のDNAなのだと思っています。


なぜトレタのメンバーは、そういう想いを強く持ち続けてくれるのでしょう。
そこにはいろいろな理由が考えられるのですが、一つ、ごく最近になって改めて実感していることがあります。

それは、トレタは「ユーザーさんが実際に使っているところをいつでも見ることができる」稀有なサービスであり、自分たちの作ったツールでお店がハッピーになっている実感を持ちやすい、とても恵まれた環境があるということです。


世の中にはたくさんの業務支援ツールがあります。たくさんのエンジニアさんやデザイナーさんが、日々いろいろな会社で、お客様をハッピーにするためにサービス開発を続けています。
しかし、その多くでは、自分たちが作ったツールが実際に使われているところを目にする機会は稀です。もちろん、お客さまに頼めば、職場を見学させてもらうことはできるでしょう。でもそれはそんなにしょっちゅうお願いできることではありません。そして仮に見せていただくことができたとしても、それは往々にして見学を意識した「よそ行き」の姿であることも少なくありません。
自分たちの開発したツールが「リアルに」使われているシーンは、そうそう見られるものではないのです。


トレタが違うのはここです。
僕らは、トレタを使っている12,000以上の飲食店にいつでも「お客さん」として行くことができます。お客さんとして普通に予約をし、普通にお店に行って普通にご飯を食べる。これだけで、そのお店がどれだけトレタを使ってくれているか、日々の業務にトレタがどれほど溶け込んでいるかをリアルに体験することができるのです。
そしてもっと深く知りたければ、帰りがけに「実はトレタの者です。今日はごちそうさまでした」と一言挨拶をしたら、そこでトレタに対する満足度や期待感をたくさん教えてもらうことだってできます。
さらに、トレタには「もっと現場を知りたい」というメンバーのために、「飲食店留学制度」も用意しています。これは、トレタをお使いの店舗さまに依頼をして、一定期間(数日から一週間など)実際に現場で体験勤務させていただくという制度です。この制度を使えば、表面的には理解できなかった飲食店やトレタの「リアル」を肌を持って体感することもできます。

世の中には「お客様の顔が見えない」ことで苦労している会社は少なくありません。いかにして「お客様の顔」を見える化するかは、大多数の企業にとって極めて大きな課題です。
例えばコンシューマー系のサービスでは、お客様の数が膨大であるが故に、お客様は「数字」になってしまいがちです。それをKPIとして掲げ、いろいろな工夫をしてアクティブ率が上昇したとしても、そこから「お客様が喜んでくれている」ことを手応えとして実感することは意外と難しいものです。
BtoBサービスでも、顧客企業の導入担当者さまからのフィードバックはもらえても、実際それを日々使っているユーザーの一人ひとりの声にはなかなか触れられないものです。

しかしトレタは違います。トレタのメンバーは、いつでもお店の方の「顔」を思い浮かべることができます。その人たちが喜ぶ姿をリアルに想像することもできます。面と向かって「ありがとう」「本当に助かっています」「トレタなしの仕事は考えられません」と言ってもらえる回数も、ほかのサービスと比較して桁違いに多いのです。これは、モノを作る人たちにとって、とても幸せな環境なのではないでしょうか。僕らはいつでもお店に行けるし、僕らのツールを使っている一人一人のリアルを身をもって体験できるのですから。


テクノロジーは人を幸せにすることができます。でも、その幸せに使われている姿を見ることができる機会は、実はあまりありません。
自分たちが作ったツールが人を幸せにすること。そしてそれを喜びとして実感したいエンジニアさんにとって、トレタには最高の環境があると思っています。

「僕らはコードで人をハッピーにしたい」「コードで世界をよりよくしたい」という強烈な想いを持っている方、トレタで一緒に仕事をしてみませんか。そしてメンバーと一緒に、お店に行きまくりましょう。


最後に大事なことを。
トレタには、導入店舗さまで食事をしたら、飲食代の30%を会社で負担する「トレタ30」という制度があります!



▽採用情報はこちら
https://corp.toreta.in/recruit/jobs/職種紹介 | 株式会社トレタ


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【書評】「HARD THINGS」は経営者への救いだ

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断言する。
これは僕にとって、過去10年で最高の一冊だ。
僕は常に手元に置いて、4半期ごとに読み返したいと思う。読み返すたびに前に進む力をもらえるだろうし、必ず新しい発見があるはずだ。そういう確信がある。
すでに会社を経営されている方はもちろん、これから経営者を目指す方にも是非手にとってもらって、読んでみてもらいたいと思う。
 
この本はある種の「救い」だ。企業を経営する全ての経営者への「救い」だと思う。
僕自身の拙い経験だけを照らしても、経営者はみな孤独で、眠れない日々を過ごしている。そしてそれは誰にも理解してもらえないのだと思っている。弱音を吐ける相手を持っている人なんて滅多にいない。うまくいかないことがあったら、それは全て自分で受け止めて何とかしていかなきゃいけない。誰かのせいになんてできないし、逃げるという選択肢そのものが存在しない。周りの経営者はみんな絶好調で上手くいっているように見えるのに、それに引き替え自分はなんでこんなことになっているんだろう、と焦って自信をなくすことだってしょっちゅうだ。
この本は、そういう苦しみを一人で抱えて仕事をしている全ての経営者に「そうやって苦しんでいるのはお前だけじゃないよ」と語りかけ、「誰だってそうやってもがいているんだよ」ということを教えてくれる。悩んで自信を失いかけて弱気になっているのは、お前が弱いからでも能力がないからでもないよ、と。誰もがそうやって人知れず戦っているんだよ、と。それを知ることそのものが、僕らにとっての救いなのだ。
そして、この本はそれだけでは終わらない。そういう苦しみとどう向き合い、どう乗り越えていったらよいかの知恵を与えてくれるのだ。
 
これは経験した人にしか分からない。だからこそ、これは定期的に読み返すべきなのだ。今読んでもピンとこないことでも、経営者を続けていれば、それが分かる日は絶対に来る。そして、新しい問題に直面して悩んでいるときにこの本を読み返せば、その悩みを乗り越える知恵と勇気が必ず見つかるのではないかと思う。
 
この本には、経営していく上での具体的なヒントが山ほど詰まっている。採用の仕方、企業文化の作り方から解雇や売却に至るまで、経験に基づいた説得力のあるアドバイスがこれでもかと詰め込まれている。1ページ1ページごとに新しい学びがある。
実際読んでいると、ハッとさせられることが実に多い。まさに自ら苦しみながら経営してきた人にしか語れない言葉があり、今まさに同じ悩みを抱えている人にとっては、驚くほど刺さるアドバイスにあふれている。
 
その一例を引用してみる。
 

職場でヨガができたりするのは企業文化ではない
今日のスタートアップは、ありとあらゆる方法でライバルと差別化を図らねばならない。その中には素晴らしい特長もあれば奇抜な思いつきもあるが、それらの大部分は企業文化を形作るのには役に立たない。
休憩時間にヨガができる設備があれば、ヨガの好きな社員は喜ぶだろう。ヨガの好きな社員同士の連帯感を高める効果もあるかもしれない。しかし、そういうものは文化ではない。こういうものは長期にわたって会社のビジネスをコアとなって支えるような価値を生み出しはしない。会社が実現しようとしている価値に直接の関連を持たないからだ。ヨガができることは文化ではない。福利厚生の一環だ。

 

組織のデザイン
組織デザインで第一に覚えておくべきルールは、すべての組織デザインは悪いということだ。
あらゆる組織デザインは、会社のある部分のコミュニケーションを犠牲にすることによって、他部分のコミュニケーションを改善する。
(中略)
どんな組織化も必要悪であるから、悪が最小であるような選択肢を探す必要がある。この場合、組織デザインを社内コミュニケーションのアーキテクチャとして考えるとよい。特定の社員間のコミュニケーションをスムーズにしたいと思えば、彼らを一人のマネジャーのしたに所属させるのが、一番間違いない方法だ。逆に組織図ではなれば位置にあればあるほど、そこに所属する社員間のコミュニケーションは疎遠になりがちだ。

 
このような感じで、読み進めるごとに盲目的に思い込んでいた「こうあるべき」という根拠のない「常識」が一つ一つ覆されて、目の前がクリアになっていく感覚を味わうことになる。
 
しかし個別の具体的なアドバイスより何より、この本でホロウィッツが一番言いたいことは「成功するために一番大事なのは意思の力だ」というメッセージなのではないかと思う。
成功するために必要なことは成功するまでやめないことだ、というのはよく言われることだが、そんな手垢の付いた言葉と違って自ら実践してきた彼の言葉には強い共感を感じるし、そこから僕らは大きな勇気をもらうことができる。
 

私が経験から学んだCEOとして最も困難なスキルは、自分の心理のコントロールだった。組織のデザイン、業務プロセスのデザイン、業務の計量化、採用と解雇などは、自分の心のコントールに比べれば、比較的シンプルな課題と言える。私は自分が心理的にタフだと思っていたが、実際に経験してみると、とてもタフどころではなかった。私はとんでもなくソフトだった。私は長年の間に何百人ものCEOと話す機会があったが、みな口を揃えて同じ気持ちを味わったという。

 

CEOには「もうこんな仕事は投げ出したい」と思う瞬間が繰り返し訪れるものだ。実際、私は多くのCEOがこの圧力に負けて酒浸りになったり、辞めていったりするのを見てきた。どの場合にも彼らは怖じ気づいたり、投げ出したりすることを合理化するもっともな理由を挙げた。しかし、もちろんそれでは優れたCEOにはなれない。優れたCEOは苦痛に耐えねばならない。眠れない夜や冷や汗 — 私の友達のアルフレッド・チュアンはこれを「拷問」と呼んだ。私は成功したCEOに出会うたびに「どうやって成功したのか?」と尋ねてきた。凡庸なCEOは、優れた戦略的着眼やビジネスセンスなど、自己満足的な理由を挙げた。しかし偉大なCEOたちの答えは驚くほど似通っていた。彼らは異口同音に「私は投げ出さなかった」と答えた。

 
泣ける。「この人は僕らの苦しみを理解してくれているんだ」と。
そして自分の苦しみは無意味じゃないのかもと思えるのだ。この先に光があるのかもと思えるのだ。
 
この本で、僕らは滅多に目にすることのできない、とある成功した経営者の本音の塊に触れることができる。この本音の塊は、そこらのメンターよりもずっと力をくれる。ゆっくりでもいいから、悩んでもいいから、おそるおそるでもいいから、足は常に前に踏み出すべきなんだと思わせてくれる。
だから、今から起業しようとしている人も、そしてすでに起業している人も、全ての人に読んでもらいたいと思う。
 
僕はいま、今までの人生の中で一番眠れない日々を過ごしている。眠っているときには仕事の夢しか見られなくなってしまった。こういうときに、この本を送っていただいた日経BPの中川さんに心から感謝したい。(もちろんKindle版も買います)
 
さ、明日からまたがんばろっと。


HARD THINGS

HARD THINGS

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

 

「デザイン」の価値と役割 - トレタの場合

弊社取締役COOのブログに刺激を受けました。
僕は決してデザインやUIについてのプロではありませんが、それでも今の立場を踏まえて、思うところを書いてみたいと思います。

UIデザインの価値 | Parallelminds
 
 
【トレタをデザインの会社に】
僕はトレタを「デザインの会社」にしたいと思って創業しました。これまでのBtoBサービスではUIやデザインがとても軽視されていましたが、その常識をひっくり返したところにこそイノベーションの可能性があると思ったからです。
そしてまだまだ完璧から程遠い状態ではあれど、トレタ社内にはデザインへの意識が根付きつつあると感じています。
これからもトレタではデザインを競争力の源泉と位置づけ、デザインによってドライブされていく会社を目指します。今回はそんな、僕らのデザインへの思いについてちょっとご紹介してみたいと思います。
 
 
【デザインから全てが始まる】
アプリを例に取れば、エンジニアの役割はデザイナーの作ったUIをきちんと動くように実装して、理想とするユーザーエクスペリエンスを実現することですし、営業はデザイナーの作りだした商品の価値を正しく伝え、1人でも多くの方にそれを使っていただくことが仕事です。ですから、デザイナーがいなければトレタの仕事は何も始まりません。デザインこそがすべての仕事の原点であり起点なのです。
 
最近は世間一般でデザインに対する意識が高まってきていますので昔とはかなり変わってきていますが、デザインが単なる商品の「包装紙」のように解釈されていた時代がありました。単に表面的な体裁を整えるのがデザインの役割。きれいかどうか、美しいかどうかだけが評価基準であり、すべてが主観で評価されていた時代です。
しかしデザインはそんな表面的なものではありません。デザインは本質であり、サービスの思想や理想を「体験」を通じてユーザーさんに伝える、最も重要な役割を担っているのです。
 
 
【トレタの思想を体現するのはデザイン】
僕らのサービス「トレタ」は、現状への不満や問題意識からスタートしています。もちろんゴールはそれらの解決であり、より良い世界を作ることなのですが、でもそういう思いや理想は、決して目に見えるものではありません。
どんなに高邁な理想を持っていても、それを一人一人のユーザーさんが目にする機会なんてないし、僕らがどれほど叫んだとしてもその声は届きません。
もちろんユーザーイベントでユーザーさんと接したり、営業活動の中でお伝えしたり、広報を通じて情報発信を積極的に行うことは可能です。でも、それでできることは限られています。どんなに頑張ったとしても、全ての人に思いの全てを伝えきることは不可能なのですね。
だからこそ、そんなことをするよりも何よりも、自分たちのプロダクトそのものに自分たちの思いを語ってもらうことが大事なんです。それが王道だと思うし、プロダクトほど雄弁に語ってくれる存在は他にはないんですよね。
だから、僕らは僕らの理想や思いの全てをプロダクトに込めます。それをお客様にお渡しして、そのプロダクトを使って頂くことで得られる「体験」を通じて、僕らの理想をお客様に肌で感じて頂く。
 
お客様からしたら、僕らのミッションだの理想だの、そんなもん知ったこっちゃありません。お客様から見えるのは、プロダクトのUIやデザインや機能が全てですし、それを使って自分の生活や仕事がどう変わるかにしか興味ないんですよね。
だから僕らは、お客様との唯一の接点である「デザイン」を徹底的に磨かなければいけないと思っています。
お客様を動かせるのは、「デザイン」をおいて他にはないんです。
 
こう考えれば、デザインは「包装紙」なんて薄っぺらなものじゃなくて、僕らの全てが込められた、一番大事なものだと思えてくるはずです。
誰よりも雄弁なスポークスパーソン。それも、言葉ではなく「体験」を通じてユーザーに語りかけることのできる存在。それこそがデザインの最大の役割なのです。
 
デザインがちゃんと仕事をしてくれたときの効果は計り知れません。お客様の驚き。共感。愛着。応援。どれだけお金をかけてCMを打っても得られないような、とてつもなく大きな財産が得られます。
でも、それはそう簡単なことではありません。
 
トレタで言えば、僕らはお店の現場の人たちの仕事を知り、どんな環境で、どういう思いをもって働いているかを理解し、使う人たちになりきって細かな一挙手一投足までをイメージしながら、アプリの隅々にまで気を配ってインターフェイスを練り、画面遷移を組み立て、それを心地よく使える意匠にまとめ上げていくことが必要です。少しでもお客様の直感や期待とずれたものを作ってしまったら、全てが台無しになってしまいます。大切なのは、僕らがお客様の立場を深く理解し、共感することです。
デザインとは、このプロセスの全てに関わり、目に見える形にまとめていくことを指すんだと考えます。
 
矛盾するようですが、トレタのデザインの究極は、それがデザインされたことすらわからないように、徹底的に存在感を透明にしていくことなんだと思うのです。トレタを「空気」のような存在にしていくと言えばよいのでしょうか。あまりに自然すぎて、その存在を意識すらしない。でありながら、それがなくなったら生きていけなくなるほど欠かせないものにしていく、ということです。
デザインが強く主張して存在感を放っている間は、まだまだデザインとしては未完成なのでしょうね。
だから、僕らはこれからもよりよいデザインを求めて常に試行錯誤をして、プロダクトを進化させていかなければならないと思っています。
 
 
【デザイナーはむしろ経営に一番近いところに】
そういうわけで、デザインという仕事は、最後に商品を包装するような「末端」に位置する仕事ではなく、むしろ経営の中枢に最も近いところに置くべきだと思っています。
アプリの仕様に関して最大の権限を持ち、会社の哲学をプロダクトに込めて形にしていくのが使命なのですから、会社の核ともいうべきところにいてくれなければ困ります。
だから、トレタで働くデザイナーには、そういう自覚や誇りを持って仕事をして欲しいなあと願っています。
 
 
【デザイナーさんに求めるもの】
そんな重要な役割を担うために、デザイナーさん(特にアプリのUIデザイナーさんだと思いますが)に必要な素養ってなんだろう?ということで、ぼくの考えをまとめてみます。
 
1)ロジカルに考えられること
物事を論理立てて考えられる能力は、特にUIデザイナーには不可欠だと思います。
一貫性があって迷わないUIを作るには、きちんとロジックを積み上げて考えられる能力が不可欠です。お客様から機能要望をもらったら、それをそのまま実装するのは愚の骨頂。それをやったら「機能の化け物」ができあがって、緩やかな死を迎えることになります。
そうではなく、僕らがやらなくてはいけないのは、その機能要望の裏側にどんな課題があるかを知ることです。顧客の課題を正しく理解し、その原因を「因数分解」したうえで、根本治癒ができるような機能を考案しなければなりません。ここで最も求められるのが「論理的思考」なのですね。
「そんなの当たり前じゃん」と思う方もいるかもしれませんが、いやいや、意外とこれができる人は少ないんですよ。知名度のある有名なデザイナーさんでも、結構感覚でデザインしちゃう人が少なくないと思います。
なので、ロジカルに考えられるデザイナーさんを見つけるというのは、それだけで結構大変なことだというのが僕の実感。
まあ、ここはエンジニアさんが得意な領域だったりするので、フロントのエンジニアさんと協力しながら作るという方法も有効だとは思うんですけどね。
 
2)発想のジャンプができること
一方で、ロジックだけでデザインしてしまう人の作るものは、得てして「つまらない」ものになりがちです。これはこれで、確かに堅実でハズレはないかもしれないけれど、世の中を変えるほどのポテンシャルは持てないのですよね。
だから、僕は「論理的に積み上げていって、最後の最後にそこからジャンプできる人」が理想だと思っています。ジャンプというのは、たとえば発想の転換だったり、ビッグアイデアの発見だったり、ユーザーを引きつけるようなちょっとしたギミックだったりと、粒度はまちまちなのですが、いずれにせよ、最後にどれだけ思い切ったジャンプができるかどうかが、デザイナーさんのクリエイティビティ=腕の見せ所だと思っています。(もちろん、年がら年中ジャンプできるような人はいないので、ここぞというタイミングに見事なジャンプができれば十分だろうとは思いますが)
 
3)高いデザインスキル
これは、どちらかというと「センス」寄りのスキルです。実装のための素材の切り出し技術とか、そういうテクニカルな方向ではありません。もちろん、領域もアプリとかウェブとかに限った話でもありません。
多くの人が美しいと思うものには、ある一定の法則のようなものがあるわけで、それを消化して自分の感覚の中に刻み込めているかどうか。それがあるかどうかで、その人の作り出すデザインやUIの品質は大きく左右されます。
きちんと感覚の中に刻めている人は、やっぱりアプリを作ってもウェブを作っても平面をやっても、一定以上のクオリティを維持できるのですね。このクオリティ感は、全体的なバランスと、ディテールの美しさという両方がそろわないとなかなか実現できないのですが、やっぱり美しさの法則を自分の血肉にできている人はなにをやらせても強いと感じます。
 
4)スマホタブレットをよく使っていること
そして、UIデザイナーなのであれば、やはり誰よりも徹底してスマホタブレットを使い倒している「ヘビーユーザー」であることが必須だと思います。
なぜヘビーユーザーであることが大事かというと、ヘビーユーザーだったら、はなから「ユーザー目線」を持っているわけですし、たくさんのアプリを使っていれば「引き出し」も多いはずだからです。やはり、刺さるUIデザインを作るには、自らが一ユーザーとしてアプリを使う側の気持ちで作れることが大事ですし、新しい機能を考える上でも、引き出しが多い人は圧倒的に有利です。
スマホタブレットには固有のUIルールみたいなものがあって、それに則った方がユーザーさんの教育コストも下がりますので、そういうUIルールをきちんと理解できている人の方が合理的なUIを作りやすいという面もあるでしょう。
 
また、最新のOSが出るなら誰よりも早くそれを体験して、新しいOSでのUIのあり方やデザインの方向性などを理解するような努力も必要なわけですが、これを義務感でやろうとしたら大変な苦痛が伴います。
こういうことを、自分の趣味として楽しんでできる人は、それだけでも大きなアドバンテージを持っていることになります。
ソシャゲの世界なんかを見ると、自分は一切ゲームなんてやらないのにゲームのデザイナーをやっている人がいたりしますけども、そういう人はやっぱり相当に苦労するんじゃないかなー、とか思ったりもします。まあこれはゲームに限った話ではないのですが。
 
5)経営者と信頼関係を築ける人
最後にこれ、とても重要です。経営者またはプロダクトオーナーと深い信頼関係を築いて、ツーカーになってくれる人が理想です。だって、会社とかサービスの思いを込めるわけですからね。そもそもそれを共有することのできない人に、そんなことはできっこありません。
 
 
ということで、改めてこうして書いてみて気づくのは、ぼくらがデザイナーさんに求めているのは、川下の実装とか技術的な素養よりもむしろ「上流部分にどれだけ関与できるか」なのかなあと思う次第。
まあアップルを例に出すのはベタすぎるんですけど、やっぱりあの会社が強かったのは、ジョブズのすぐそばにアイブという存在がいたからなんだなあと思うんですよねー。
 
★★★
 
はい、そういうわけで、ここからはお知らせです。
 
トレタではデザイナーさんの仲間を募集しています!
前述の「素養」でも書いているとおり、経験の種類はあまり問いません。グラフィックでもアプリでもウェブでも。
むしろ、デザインの負っている責任の重さを知り、その中で「デザインで会社をドライブしてやろう」と思ってくれるような仲間を探しています!
いろいろ小難しいことも書きましたが、つまるところ基本的にトレタは「人柄採用」ですしw、ぼくもCOOの吉田もまずはいろんなデザイナーさんに会ってお話ししてみたい!というモードですので、まああまり細かいことは気にせず、冷やかしでも、ランチ一緒に食べましょーくらいの感じでもご連絡いただけると嬉しいです。
 
では。
 

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飲食店の立場からO2Oの本質を考える

グルメ系のウェブサービスは山ほどあるわけですけれど、これから結構大きな地殻変動が起きると思うんだよね、という話。そしてなんで僕がトレタを始めたのかという話。
 
■これまでのグルメサイトのKPIはPVだった
グルメ系サービスといえば食べログぐるなびホットペッパー。これが日本における三強と言ってよいでしょう。これらが今までの日本のグルメ系サービスの発展を支えてきた牽引車だと思います。
で、これらのサービスの根本的な成り立ちはどこにあったかというと、「PV」だと思うのですね。
実際、ぐるなびさんが加盟店に提示するレポートの一番重要な指標は「アクセス数」ですし、ぐるなびさんからの営業トークで一番典型的なものは「もっとアクセス数を増やした方が来店に繋がると思うので、○○の特集に掲載してみませんか」というものでした。(豚組の経営から離れて久しいので、今は違うかもしませんが)
食べログが成功したのも、つまるところSEOで圧勝したからだと思うんですが(場合によっては店舗の公式ページよりも上位表示されるんですからねえ)、それにしたって突き詰めればPVってことだと思うんですよね。食べログではレビューだとか点数だとかが大きく注目されがちですが、いやいや、彼らの本当の強さはSEOだと思うんです。強いSEOが大きなPVを生むからこそ、レビューやスコアが圧倒的な影響力を発揮できるわけです。
 
■PVは来客に繋がるのか?という疑問
一方で、飲食店側からすると「アクセスが多いからと言って、それが本当に来店に繋がっているの?」という疑念は昔からありました。
どれほど多くの人に見てもらったと言っても、それが本当に来客に結びついているかどうか、確証はどこにもありません。クーポンで効果測定してください、というのがグルメサイト側の主張だった時代もありましたが、今ではそれも無理。だって、クーポン利用のお客様の相当数は、「お店を決めた後にクーポンを探す」という行動になってしまっていますから。中には、お店に入ってからスマホでクーポンを探すという人だっています。
結局のところ、グルメサイトのPVがどれだけ集客に繋がっているかは誰にも分かりませんし、検証のしようもありません。まあこれまでのグルメサイトは根本的に広告と同じ構造ですから仕方ないんですけどね。
とはいえ、これは飲食店を経営する側からすると「モヤッ」とするわけです。現場では原価率や水道光熱費やらを必死に節約しながらカツカツで利益を必死に出そうとしている一方で、なんというか非常にどんぶり勘定でお金を持って行かれる感覚になる。もちろんグルメサイトの人はそんなつもりはないでしょう。彼らは彼らで誠意を持って飲食店の役に立とうとしていても、そもそも構造的に費用対効果が明確にできない以上、これは仕方ないのですよね。でもこの構造的な問題が、回り回って飲食店のグルメサイトに対する不信に繋がったりもするわけです。
 
■昔から理想にチャレンジした人たちはいました
でも、そういう「モヤッ」とした落ち着きの悪さに気づいている人は昔からいまして、成果報酬モデルを試みたサービスもありました。たとえば、その昔には「モック」という会社があってですね。上場もしていたのですが、今は跡形もありません。
彼らが2000年に手がけたサービスの一つに、宴会エージェント事業「幹事さんいらっしゃい!!」というものがありました。このサービスはまさに成果報酬型で、宴会の幹事さんがモックに電話で依頼すると、モックがオススメのお店を選び出して、そこに予約まで入れてくれるというものです。もちろんビジネスモデルは手数料型で、後日、モックからお店に「送客手数料」が請求されます。(お客様は無料です)
でもこのモデル、うまくいかなかったんです。なぜなら手数料が高かったから。モック側からすると、オペレーターを置いて予約手配に人を動かしてそれに見合う収益を上げようとすると、宴会料金の10%とかを請求しないと割に合わないわけですが、一方で飲食店からすると10%も持って行かれたら利益なんて出ないよ、となってしまう。すると、ある程度の集客力のあるお店にとっては全くメリットのないサービスとなるわけで。
結局のところ、それでも閑古鳥が鳴くよりはいいや、と割り切ってサービスを利用する「暇なお店」ばかりがモックに登録することとなり、「モックから紹介されるお店は残念なお店ばっかじゃん」と感じたユーザーがどんどん離れていくことになってしまうという悪循環に陥ったのです。
結局のところ、これまでは成果報酬モデルは成立しないというのが業界の半ば常識となっていて、広告モデル(&一部のユーザー課金)の事業だけが生き残ってきたというのが、グルメサイトの歴史でもあるのですね。
 
■PVからCPAの時代へ
でもそろそろ環境が大きく変わろうとしています。スマートデバイスが登場し、クラウドが普及した今、技術的な前提条件は過去とはまるっきり異なっています。今までは逆立ちしてもできなかったことが次々できるようになってきていて、もちろんグルメサービスその大きな環境の変化によって激変するんじゃないかと思うのです。
グルメサービスでも、決済とかクチコミとかいろんなものが変わりつつあるわけですが、その中でも僕が期待しているのが、まさに「送客手数料モデルよもう一度」であり、それを実現する一つの方法論が「ウェブ予約」なのです。まあ、だからこそトレタを始めたわけですけれど。
つまりこういうことです。「A」というグルメサイトでお店を見た人がそのままそのページで予約までしてくれれば、お店からは明確に「グルメサイトAから送客された」ことがわかりますよね。そしたら、その送客実績こそが課金の根拠となります。もちろん、モックのように間に人を介在しませんから、費用感は全く異なって、極めてリーズナブルな水準で提供が可能になります。
これはつまり、グルメサービスのKPIが、「PV」から「CPA」に変わるということなのですね。PVを根拠にしたこれまでのサービスと違うのは、獲得コストが明確になるという点。飲食店からすると極めて納得性の高い指標をベースにしたサービスが実現できることになるのですね。
こうして、飲食店が今後PVでなくCPAに対してお金を払うようになるのであれば、グルメサービス自身もそれに合わせて変わっていかざるを得ないのではないかと。
飲食店はそもそもコスト意識の非常に高い業界です。それでも、これまで技術的に不可能だったから「どんぶり勘定」が通用していたわけですが、その前提が変わり、費用対効果が明確になるなら、そちらのモデルに一気に移行していくのは、実に自然なことではないかと思います。
 
■飲食店にとってのO2Oとは
ということで、巷ではO2Oという概念が普及して久しいのですが、実は飲食店にとってのO2Oの本質とは、PVからCPAへの移行であると解釈した方が正しいんじゃないかと思うんですよね。一部では、「オンラインで集めた人をオフラインに連れてくる」ことをO2Oと解釈している人がいますが、そこは本質じゃないよなあと。オンラインからオフラインが断線せずに繋がって、集客の費用対効果が明確になることこそがO2Oの真の価値なんではないかと。
飲食店からすると、ウェブ上で集めたユーザーさんのうち実際にどのくらいの人がお店に来店してくれているかを「見える化」し、ウェブ上で集めた人数ではなく、実際に来店した人数に対して集客コストを支払うモデルに移行していくことが、O2Oの意義なんですよね。
 
そんなわけで、トレタの存在意義はまさにその数値を明確にする基盤を作るところにあると考えております。
ちなみに、KPIがPVからCPAになったとき、グルメサイトのあり方は激変していくわけですが、それが具体的にどういう変化になるのかはまた別の機会にでも。いったんは皆さんの想像力にお任せしておきたいと思います。
 
 
あ、あと、現在仲間を絶賛募集中ですのでよろしければこちらも。

トレタの進化を「かたち」にする こだわり派のデザイナーさんを募集します! - 株式会社トレタの求人 - Wantedly
 

「トレタ」の進化を加速し、サービスの可能性を拡大するエンジニアを募集! - 株式会社トレタの求人 - Wantedly

アプリのリリースに必要な「引き算担当」について

起業してアプリを出す。
一言で言ってしまえば簡単なんですけど、最初のそのアプリリリースの時に失敗する人が少なくない気がします。
 
僕の観測範囲だけでも、独立してアプリを出そうとして開発に失敗、「作り直し→リリース延期」となるケースを定期的に目撃しますので、それなりにそういう失敗をする人はいるんじゃないでしょうか。これが20代の若手が失敗したというならまだ分かるんですが、経営者としてすでに十分な実績のある、僕自身も尊敬するような方がその陥穽に陥ったりしていますので、これはもう能力とか才能の問題でなくて、むしろ「知識」の問題なんじゃないかと思うんですね。
そういう僕も、kiznaというアプリを出そうとして落とし穴にはまってしまい、結局日の目を見なかったという苦い経験をしていますので、こういう経験はちゃんと共有して、無駄な犠牲者が出ないようにすべきだと思うわけです。
 
というわけで、初めてアプリを出す方へ、僕から一つだけお伝えしたいこと。
 

【アプリを出すときは、機能を徹底して削る担当者を決めるとよいと思います】

 
リーンなんちゃらでも「MVP」という考え方がしきりに喧伝されているので、そんなの分かってるよという人も多いでしょうが、これ、知ってるのと実践するのでは全く違うんですよ。僕がkiznaで失敗したときだって、最初から「機能はできるだけ削ろう」って言ってましたからね。それでもやっぱり失敗するんですよ。
 
では、なぜ僕が知っていながら失敗したかというと、僕が機能を削る役割も担当しようとしたからなんですね。
 
冷静に考えれば、創業者(←このエントリーでは、僕の経験に基づいてエンジニアでない人が創業社長をやっていると仮定しています)が機能を削る役割まで担うなんてのは至難の業です。そりゃそうです。彼の頭の中にはおっきな理想の世界が広がっていて、あれもこれもしたい、あの機能もこの機能も大事、全部やらなきゃ自分の目指す世界は実現しない!ってモードになってるわけです。一方で、その状態から本来の意味での「MVP」を作るとしたら、控えめに言っても機能を1/10くらいまで削らないといけません。
盛り上がっている自分を抑えつつ、自分の考えた大事な機能を無慈悲にバサバサ削るなんて、よっぽどの自制心と自己客観視ができる人でなければ無理でしょう。でもそんなのほとんどの起業家にはできないと思います。てか、それができるような人はそもそも起業家に向いてないかもしれない。
 
なので、創業者がそれをやろうとしても上手くいかないと思うんですね。結局削りきれないで終わってしまう。
だからそれは別の誰かに任せてしまうべきなんです。
 
僕がkiznaの失敗のあとにミイルやトレタを無事にリリースできたのは、増井という得がたい仲間ができて、彼が徹底的して「削り屋」を担ってくれたからです。
彼はもちろんエンジニアとして非常に希有な存在なのですが、それ以上にすごいと思うのは、ビジネスの意義やゴールをしっかり理解しながら、その文脈の中で「この機能はいらないですよね」「ローンチ時にこの機能があったって誰も使わないですよね」と冷徹に指摘ができる点にもあると思っています。片方ではどの機能実装が技術的に大変そうか判断をしながら、もう片方ではビジネスとしてどの機能が重要かを判定し、その両者のバランスを取りながら「実装は重いけれど、機能的には緊急度が高くないもの」を見つける作業をしてくれるわけです。
ちなみに彼がさらに上手いのは、ここでのポイントを「重要度」ではなく「緊急度」という基準で判断を求めてくることなんですね。僕自身、「重要度」で聞かれたら「全部重要に決まってるじゃん」としか答えられないわけですが、「緊急度」で聞かれると「ああ、確かに最初にはいらないね」と素直に答えられるんですね。
もちろん「あった方が良いと思うんだけどなー」くらいの温度感だったら、容赦なく「じゃあ今じゃなくていいですね」と切り捨られます。
 
こんなふうに、トレタのローンチに際しては、僕は機能を増やす役割に専念して、彼は機能を減らす方に全力を傾けるという役割分担で開発を進めました。もちろんそのすり合わせは常に「緊急度」で行われました。そしてこの役割分担と進め方によって、僕の当初の機能要望は見事に1/10まで削られたというわけです。
このおかげでトレタはほぼ計画通りのスケジュールでリリースできましたし、シンプルで尖った、そして信頼性の高いサービスが最初から実現できたのだと思っています。もちろん僕の立場からしても「間に合うのか」「ちゃんと動いてないじゃないか」みたいなストレスを感じずに済むわけですから、結果的に営業活動により多くのリソースを割けるようになるなど、非常に多くのメリットがあったわけです。
 
そういうわけで、これから独立してアプリを出そうとお考えの方は、是非「削り屋」を見つけて頂くと良いのではないかと思うのですが、でも削るのが上手な人って、意外と少ないんですよね… そもそも社長が「欲しい」というのに対して正面から「それいらんでしょ」と言うわけですから、起業家と対等に遠慮なく話せる人じゃないといけないわけで… じゃあ投資家ならできるかといえば、技術的理解があって、起業家と同じように事業を理解して、同じ熱量、同じ目線で対等に議論できる投資家もいそうでいないですしね…
こういうことをできるのがCTOって言ってしまえばそれまでなんですけど、ただ技術的に優れた人が必ずしもこういう役割を担えるとは限らないところが、またモヤッとしますね。
 
 
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「トレタ」の進化を加速し、サービスの可能性を拡大するエンジニアを募集! - 株式会社トレタの求人 - Wantedly

プレゼンに必要なこと【セールス向け】

先日、トレタの社内でセールスチームを集めてプレゼン大会を行いました。
もともとは最近某コンペで「プレゼン負け」があったので、そのてこ入れとしてプレゼン強化を行おうという狙いで開催したのですが、これがセールス各自はもとより責任者やマネジメントそれぞれにとっても大変勉強になる良い機会になりました。
こういうロープレ的な実戦に即した練習はとても大事だと思った次第。
 
で、その内容についてまとめたものを社内で共有したのですが、自分たちの戒めや心がけとして公表しておくのもいいかも、ってことでブログに転載してみます。
 
★★★
 
セールス各位
 
簡単なメモは先日のロープレ終了後にマネージャーから返してもらっていますが、それでは不十分かと思いましたので補足です。
改め、この前のスタート会議内で話したことと併せてのフィードバックです。
 
【情報の取捨選択】
金曜日のロープレでは、各自のトレタの知識が増え、トレタの機能自体も増えていく中で、それを「全て」お客様に伝えようとして、結果まとまりのないプレゼンになっている人が多い印象を受けました。
そもそも、トレタの全てを完璧に説明しようと思ったら、時間は2時間あっても足りません。
しかしお客様からはそんな時間をもらえるわけもなく、つねに限られた時間の中でトレタの価値をお客様に伝えなければならない。それがセールスの皆さんの現実でしょう。
 
そのためには、「引き算」が必要です。何を話し、そのためには「何を話さないか」。
大抵は、話したいことを全て積み上げると、与えられた時間を軽くオーバーすることになります。ですので、伝えたいことを全て列挙した上で、そこから引き算をしていく作業が必要になるわけです。
そこを引き算せずに「早回しで詰め込もう」とかやっても無理です。それをやると「全部言おうとして全部伝わらない」という最悪のケースになります。
 
昨日プレゼンでは、うまい人とうまくない人の差は歴然としていたのですが、うまい人はその引き算の思い切りが良いことが勝因の一つになっていると感じました。
僕は広告代理店時代に「ワンクリエイティブ・ワンメッセージ」というルールを徹底的にたたき込まれたのですが、それはプレゼンでも同じだと思います。一回のプレゼンで伝えられることは一つだけ。いくつも伝えようとすればするほど、結局は何も伝わらなくなります。だからこそ、徹底的に「何を伝えるか」を吟味して、練りに練ったプレゼンを行わなければならないんです。
 
 
【話す内容に優先順位を付ける】
でもその引き算を間違えると、大事なことが全くお客様に伝わらず、お客様からしたらどうでもいいことや興味の無いことばかり聞かされるという、それこそ最悪のケースも出てきます。
その失敗が怖くて引き算ができないという人もいるかもしれませんが、そもそもその優先順位を深く考え抜いていなくて、「なんとなく」話す内容を決めている人もいたように感じられました。結果、大事なことは全然伝わらず、どうでもいいことに余計な時間をかけるようなプレゼンができあがります。
ではなぜその優先順位をうまく決められないか。
それは単純に「情報不足」が原因でしょう。お客様についての情報が圧倒的に足りていないから、引き算を行おうにもその基準が全く分からないというわけです。
 
 
【なぜ情報不足が起きるのか】
なぜ情報不足が起きるかといえば、それは本当に単純で「真剣に、お客様のことを深く知ろうとしていない」からに尽きます。ではなぜ深く知ろうとしないかというと「お客様のことよりもトレタや自分のことで頭がいっぱい」だからなのではないかと思います。
つまり、「自分に求められていることは、トレタを詳しく理解していることだ」「自分はトレタのことをきちんと説明できなければならない」と思うがあまり、お客様のことよりもトレタのことでイッパイイッパイになっているということですね。
 
 
【お客様を深く理解することが一番大事】
まずはその思い違いを改めましょう。セールスの皆さんに一番求められていることは、「お客様のことを徹底的に理解する」ことです。「あたかもお店のスタッフの一員として、あるいは本部の一員として、ときには経営者として、そのお店のことを同じ目線で共感を持って語れる」のが理想なんです。
 
たとえば、Eさんのプレゼンを受けて僕が一番グッときたことは、彼は「まるで店長さんの代理として、本部や経営者を説得しようとしていた」ことです。Mさんのプレゼンも、一生懸命お店のことを理解しよう、一生懸命役に立とうとしていることがとても伝わってくる、極めて印象的なものでした。
あるいは、トレタの機能なんて全然理解していないYさんが、それでも見事に案件を取ってきたりするのも同じことです。彼はトレタのことを勉強する代わりに、お客様と同じ目線で語れる技術を持っているんですね。(機能の勉強をしないことを認めているわけではありません)
 
 
【相手と共感できれば「勝ち」】
僕がお店を経営していた頃にはいろんな営業の人からセールスを受けました。そのとき、常に僕が質問していたのは「売り込みに来てるのはいいんだけど、そもそも君はウチのお店で一度でも食事したことあるの?」「仮に食事したことなくても、ウチのことをちゃんと調べてきてるの?」ということです。そして、それをきちんとできている人とそうでない人のセールストークには、歴然とした説得力の差がありました。例え同じサービスや製品を売りに来ていても、です。
 
だから、セールスで必要なことは「トレタを一生懸命説明すること」ではなく「トレタはウチのことをきちんと分かってくれてるんだな」「トレタならウチの課題を解決してくれそうだな」「この会社だったらウチのお店の繁盛に力を貸してくれそうだな」と感じてもらうことだと思うのですよね。
やはり金曜日のロープレでも、そう思わせることに成功している人のプレゼンは説得力があったし、それができていない人のプレゼンは全然頭に入ってこなくて、心もピクリとも動きませんでした。
なので、皆さんはまずはお客様の共感を得ることに全力を注いで欲しいと思います。
 
ちなみに念のため言っておくと、お客様の共感を得るのは、決して媚びを売ることでもひれ伏すことでもないですからね。むしろちゃんと対等な目線で(但し敬意を持って)話せるという技術も必要です。人間誰しも、自分に媚びを売る人のことなんて信用しないでしょ?
 
 
【提案に至るまでは徹底的に「知る」努力を】
その信用を得るためにも、そして正しい提案ができるようになるためにも、絶対に欠かせないのは「相手を知る」ことです。
営業の皆さんは、何はなくともとにかくお客様のことを深く深く理解するように努力しましょう。そこで必要になってくるのは「聞く技術」です。
 
これもまた僕の過去の経験から言うと、聞き方にも巧拙はあってですね。「おまえ、なんでそんなこと聞いてくるの?」というピント外れな質問や、「君、そんなことも知らずにウチに来てるの?」みたいな下調べや最低限の知識があれば分かりそうなことを聞いてくる人は、そもそも提案に至ることもなくお引き取り頂いていました。
逆に「おお、そういう質問が来るか。鋭いな」とこちらが嬉しくなるような質問をしてくる人もいるんですよね。そういう場合はこっちもノリノリになって前のめりでいくらでも教えちゃうし、もっと言うとその質問だけで取引を決めたりすることだってあるわけです。
 
だから営業の皆さんには、トレタのことをうまく説明する練習をする前に、お客様に質問する技術を身につけて欲しいと思っています。社内には、トレタのことに詳しい人はいくらでもいます。でも、お客様について正しく詳しく知っている人は誰もいないんです。そのお客様のことを深く知ることができるのは、担当の営業だけなんです。
じゃあどんなことをどうやって質問したらいいか。
 

  1. わざわざ質問するまでもなく、知っていて当たり前なこと
  2. 知らなくてもマイナスにはならないけれど、知っていると信頼を得られること
  3. 僕らが知らなくて当たり前で、質問してきちんと教えてもらわなければならないこと
  4. 相手を感動させるような深い/鋭い質問

 
質問にはだいたいこの4段階があると思います。営業の方には、まず1から3まではきちんと整理して押さえておいて欲しいところです。そして「ヒアリングシート」を用意するなら、1の質問なんて絶対にそこに入れないようにね。
あと、4についてはあまり無理をしないように。これは少しずつ身につけていけばいいことだと思います。表面だけなぞって「御社の哲学は」みたいな質問をしても、逆に「イラッ」とさせるだけですよ。
 
 
【常に心がけることでしか改善されない】
トレタの側に立ってプレゼンするか、お客様の側に立って提案できるかは、実は結構根源的な課題です。これは技術でもテクニックでもなく、セールス一人一人の考え方や気持ちの有り様に関わるからです。今までできていなかった人が「今日からお客様の立場で考えて行動しろ」と言われたからといって、身に染みついたやり方はそう簡単には変えられません。
でも、これは変えようと努力しなければ決して変わらないのも事実です。
 
だから、とにかくセールスの皆さんは、日々心がけて欲しいと思うのです。毎日毎日、自分のスタンスを客観的に見て、あるいは仲間から指摘してもらって、常日頃から自分の意識を変えていくように努力するしか、この問題を根本から解決する方法はないと思っています。
 
 
【準備をする - プレゼンの度に資料を作り替える】
プレゼンの度に資料を作り直す。これは時間のない営業の皆さんの立場から言えば大変なことだとは思います。でも、これはとてもとても大事なことです。是非やってみて頂きたい。
なぜか。
 
確かに「トレタの説明をする」と考えれば、資料は一つあれば事足りるでしょう。トレタというサービスは一つしかありませんから、何通りも資料を作るという必然性はどこにもありません。
でも、お客様はどうでしょうか。お店によって、会社によって、営業スタイルやオペレーションは違いますし、目指す理想型も違う。もちろん抱えている問題も千差万別です。
では、一店舗一店舗異なる課題をきちんと把握し、それを解決する方法を提案するのだとしたら?当然、そのお店ごとに必要とされる資料は異なりますよね。
 
つまり、資料をお客様ごとに作り替えているか、それとも一種類の資料で使い回しできているかは、各セールスの営業姿勢そのものが現れるところなんだと思うのです。
そして、もし自分が一種類の資料で営業できてしまっているとしたら、営業に対する考え方を根本から振り返ってみてほしいと思います。そして問いかけてみて下さい。
自分はどういう立場でお客様に提案しているだろうか。トレタの人間としてお客様と対峙して話をしているか?それともお客様の一員として、仲間として同じ目線で話せているだろうか?
自分はトレタの機能を紹介して終わっていないだろうか?トレタを使うことでそのお店に起きること、トレタがどう役に立つかを話せているだろうか?
 
資料を作る手間を惜しんで「数」をこなしても、結果は出ません。だったら、もう少し丁寧にお客様一社ごとにきちんと資料を用意して、お客様の課題を一緒に解決する姿勢で臨んでみて欲しいと思います。
 
 
【準備をする - リハーサルをしているか?】
今回、強く感じたこと。それは明らかな練習不足です。ひとことでいえば、プレゼンがこなれていない。僕らのプレゼンでは特にデモが大事なはずなのですが、そもそもそのデモが全くの練習不足で実にたどたどしい。その結果、肝心のデモでお客様を引きつけることもできず、感動させることもできず、使いやすさという最大の魅力が伝えられずに終わるというケースが少なくありませんでした。それじゃ勝てるわけないよね。
 
また、プレゼン時間も「15分」と伝えてあるのに、その時間に収まらない人、そもそもその時間を気にしていない人も多すぎです。お客様から15分と言われたら、絶対に15分に収めるようにしましょう。それだってお客様との大事な約束なのですから、反故にしちゃいけません。
 
15分は短いです。その中できちんと大事なことを全て盛り込んでお客様に理解してもらうには、時間配分や構成が一番大事なのですね。どの説明に何分くらいかけたらいいか。どういう順番で話したら、より説得力が高くできるか。それは考えても考えすぎることはありません。
だから、きちんと時間内で自分にできうる最高のプレゼンをするためにも、絶対にリハーサルをして下さい。ストップウォッチを使い、時には同僚や上司にも見てもらって、自分のプレゼンを改善する努力をして下さい。リハーサルは、お客様の前でプレゼンする時には必ず事前に一回はやっておく習慣を付けて下さい。
 
「頭の中でシミュレーションしてます」「頭の中でリハーサルしてます」と言う人もいますが、そんなのリハーサルのうちに入りません。ちゃんと本番と同じように資料を使い、本番と同じようにデモをやって、本番と同じように他人に見てもらって、それでないとリハーサルにはなりません。
こうして何度もリハーサルをしていけば、だんだんと説明やデモが自分のものになっていきます。どんな状況でも慌てず、落ち着いてプレゼンできるようになれば、プレゼンの説得力も変わってきます。お客様の目を見たり、お客様の反応を見ながら冷静にプレゼンのやり方や内容を微調整することだってできるようになります。
 
間違えて欲しくないのは、そのくらいのレベルには誰だって到達できるってことです。この程度のプレゼンに「才能」は関係ありません。現状できていない人は、単に練習不足なだけです。
 
 
【準備をする - プレゼンのゴールを明確に把握する】
それともう一つ。
ロープレでも散見されたのですが、プレゼンや提案の機会をもらったとき、その「ゴール」が何かを分からないまま臨んでいる人が数名見受けられました。
 
ゴールを正しく理解するのはとても大事です。というか、ゴールを理解せずにプレゼンするなんて、目的地が分からないのにいきなり走り出すようなもんです。100m走なのか、マラソンなのか、それとも登山なのか、単なる通勤なのか、はたまた海外旅行なのかが分からないのに、いきなり家を出る人はいないですよね?
 
先方は予約情報の電子化のメリットを理解している?それとも紙のまでいいというスタンス?
決裁者の承認をもらうのが目的?それともまだ見てもらうだけの紹介の場?
先方の関心があるのはデモを見ること?それとも導入によって経営にどういうメリットがあるかを理解してもらうこと?
これは単独のプレゼン?それともコンペになっていて、他社と比較される?
 
こういった前提条件が変わるだけで、プレゼンの内容はガラッと変わります。前提を誤解して、あるいは情報不足のままプレゼンに臨んだって、勝てるわけないですよね。これは「知る」ことにも通底する問題なのですが、プレゼンの場合は、そのプレゼン自体の目的もきちんと聞いて理解した上で臨むようにして下さい。
 
 
以上、ちょっと量が多くて申し訳ありませんでしたが、考えついたことを一通りざっとまとめてみました。また思いついたことがあったら随時共有します。
今回のロープレをきっかけに、会社として強制されなくても、セールスチーム、あるいはメンバー一人一人が自主的に改善の工夫を行ってくれることを期待しております。
 
 
【おまけ】
そんなことを考えていたら、こんな本に巡り会いました。
これ面白いです。今回僕が感じたこと、そしてみんなに伝えたいことをより深く掘り下げて、かつ体系立てて解説してくれています。僕が理想とする仕事のあり方はこんな感じ。
デザイナー向けの本に見えますが、むしろセールスの人たちに積極的に読んで、自分の仕事に対する姿勢や仕事の進め方を振り返ってみて下さい。
 

クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法

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[告知] トレタは仲間を募集しています!
僕らは、セールス、エンジニア、デザイナーなど、まだまだ仲間を増やしていきたいと思っています!興味のある方は info [at] toreta.in までお気軽にメールを!いきなり面接でなく、まずはご飯とお酒からのお付き合いで結構です(^^)

トレタでの「slack」活用を紹介してみる

おかげさまで、トレタもコツコツ導入実績を積んで、少しずつ会社らしくなってきました。
気づけばメンバーも20人を超えてオフィスの席が足りなくなり、恵比寿にもお引っ越ししました。(お引っ越しについてはまた別の機会にでも書きます)
 
会社には、その規模とかステージに応じた情報共有環境が必要になるんだと思うのですが、今回はトレタでのslack(チャットサービスです)の活用についてご紹介してみたいと思います。
たかがツール、されどツールツールが変わるだけで、仕事の仕方とかコミュニケーションの形もガラッと変わるんですよね。で、トレタもslackのおかげで仕事から会社の雰囲気まで、いろいろなことが大きく変わりました。
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7月から全社で利用中
トレタでは、7月からslackを全社の標準チャットツールとして採用しています。今やチャットツールにも多種多様なサービスがありますが、帯に短しな感じでど真ん中にどんぴしゃでハマるツールはなかないんですよね。そんな中、slackは「もしかしたら」と思わせてくれる可能性があると感じています。
 
 
デザインとUI
slackの良さの一つは、なにはさておきまずはそのデザインやUIにあります。仕事の中でもっとも長時間使うのがチャットツールですので、気持ちよく楽しく仕事をする気になるよう、快適なデザインやUIはとても大事です。ツールのデザインが残念なだけで、アウトプットのクオリティも知らず知らずのうちに影響を受けると思うんですよね。だから、チャットツールのデザインはオフィスの内装デザインと同じかそれ以上に重要なのだと、とにかく僕はそれを声を大にして主張したい。
そういうわけで、チャットツールでは、徹底してデザインにこだわっていただければ幸いです>チャット系各社さん
 
その点、slackは本当に良くできています。ディテールにまで気を配った美しいデザイン。むやみに多機能を追わず、シンプルで迷わないUI。本当にクオリティ高いと思います。
英語のインターフェイスしかないため導入当初は戸惑うスタッフもいましたが、「いいから使え」と強制したらあっという間に定着してしまったことからも、UIのできが良いことが伺えるかと思います。
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botの活躍
slackの導入を強力に進めたのは、他でもないCTOの増井でした。なぜ彼が半ば無理矢理に導入したかというと、「自由に遊べるいろんなツールを追加できる」からです。で、実はそういう自由に遊べる要素は、ツールの定着にとても重要だったんですね。「また増井さんがオモチャ見つけてきた」とか思ってすまんかった。
そんな増井が、slackを導入してすぐにやったこと。それは「bot」の創造です。神は泥からbotを作りました。(てか、チャットを導入して最初にbotを作るとか、意味がよく分かりませんでしたw)
 
現在、トレタには「hubot」くんと「高橋」さんという二人のbotがいます。彼らは、その人工無能ならではの絶妙なタイミングでメンバー同士の会話にツッコミを入れてきます。創造主はどうやらキャラ設定まで無駄にしっかりやっているようで、hubotくんはフレンドリーなんだけどなぜかギャル、高橋さんは基本的にドS系となっているようです。そして高橋さんは、弊社で「残念な高田純次」の異名を持つ営業責任者Y氏がお気に入りのようで、常に彼の適当発言をバッサリ切り捨てるという、社内的にも極めて重要な役割も担うようになっています。
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たとえばこんな感じとか
 
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こんな感じで、適切なタイミングで絡む高橋
 
 
統計情報の表示
hubotくんはギャルみたいなしゃべり方の割には結構働き者で「hubot stats」と呼びかけると、自動的に最新の加盟店舗数や予約件数など最新の統計情報を、「hubot 天気」と書くと今日の天気予報を教えてくれます。
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今までは、エンジニアさんに都度「今の予約件数は何件?」「先週のアクティブは?」と聞かないと分からなかったことが、これでいつでも最新の情報を簡単に得られるようになりました。
統計情報は最近さらに強化が行われまして、GoogleのBigQueryと連携して、毎日自動的に統計情報がslackに投稿されるようになりました。そのデータにはGoogle Spreadsheetへのリンクも添付されていて、そこから分析データを開くと時間帯別の予約件数や、直近3日間に一件も予約を登録いないお店のリストなども表示されるようになっています。
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勤怠管理
トレタで結構苦労していた管理の一つが「勤怠」です。ウチは営業スタッフも多く、直行や直帰も少なくありません。エンジニアやデザイナーがオフィスに出勤せずリモートで仕事をすることもあります。なので、タイムカードでの管理ではなかなかきちんと実態を把握しきないわけですが、これもslackで解決できました。
 
増井が作ったのは、slackに「#timesheet」という勤怠専用のチャネルを作成し、そこに「おはようございます」「お疲れさまです」「今日はお休みします」などと投稿するだけで、その人の出勤・退勤・有給などを判別し、自動的にGoogle Spreadsheetに勤務時間を登録してくれるという仕組みです。
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まあ、増井が作るものですので、色々と無駄なところにやたら凝っているわけですが、その「ゆるさ」が結果的に全員が無理なく楽しんで参加できる勤怠管理運用に繋がっている気がします。
ちなみに、打刻を忘れている人にはhubotくんが「今日はお休み?」って質問してきたり、「まだ誰かいるかな?」みたいに聞くと、まだ退勤を打刻していない人たちの一覧が表示されたりする機能もあったりします。管理者的にも超便利です。
過去タイムカードのアプリなども色々試したものの、なかなかきちんと全員が忘れずに打刻するような運用ができなかったわけですが、slackのこの仕組みでは、見事に全員がきちんと参加できています。
 
 
サポート情報/開発やニュースだって自動的に投稿されます
さらに、Zendeskでやりとりされているサポート情報も、動きがあれば自動的に投稿されますし、ウェブでトレタに関する新しいニュースが出たときにもそれを検索してフィードに流すなんていうこともやっていますし、開発の部屋ではGitHubのIssuesの動きも自動的にフィードされるようになっています。
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以上、簡単にトレタでのslackの使い方をご紹介しました。
開発でも営業でもサポートでも管理周りでも、最新の情報は全てが自動的にslackに流れてくるような仕組みができましたので、複数ツールを渡り歩かなくても、slackの中だけでほとんど会社やサービスの動きが見えるようになっているのは、実に快適です。
そして、情報が集約されればされるほどメンバーのslack利用率も上がり、結果としてコミュニケーションも活発になる。botが混じることによって思わぬツッコミが入ったりすることで、それがまたメンバーの笑いを誘い、チャットルームの雰囲気がフレンドリーなものになっていく。
 
こうして考えると、もはやチャットツールは単なるコミュニケーションにとどまらず、会社の全ての情報や動きが集約される場所になっていくのかもしれません。もちろん、slackだけで仕事が完結するはずはなくて、トレタでもGitHub、GoogleDrive、GoogleAppsGmail、Zendesk、Dropboxなどの多くのツールを使っているわけですが、slackがそれらのハブとなることで、それぞれのツールの効果をより高めてくれているのだと思います。
 
実は会社の雰囲気を良くしてくれているのはslackの他にもう一つ、「日報」の存在があるのですが、それはまた別のエントリーでご紹介したいと思います。この日報もまた、是非皆さんにお勧めしたい仕組みの一つだと思っています。