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【レビュー】ソニーRX1が「メインカメラ」と「サブカメラ」の定義に問いかけるもの

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もう、僕はフルサイズセンサーを積んだカメラを日常的に持ち運ぶなんて、一生できないと思っていました。
 
5Dや5D markIIを鞄に突っ込んで毎日持ち運んでいた、若き日々は遙か彼方。電車や自転車に乗る機会が増え、それと反比例するかのように体力も落ち、肩痛や首痛も慢性的になり、もはやフルサイズ一眼レフを日常持ち運ぶことはほぼ不可能になりました。去年買った5D markIIIは、今ではイザというときの守り神のように、カメラ棚の奥にご本尊として祭られている状況です。ご開帳されるのは、月に一度あるかないか。
 
いきなり年寄り臭い話ですみません。
 
でもね、僕は本当はフルサイズセンサーを積んだカメラが大好きなんですよ!フルサイズ厨なんですよ!
ミラーレスばかり使うようになってしまった今でも、センサーサイズが大きいのは絶対的な正義だと思っています。
フルサイズセンサーのカメラに明るい単焦点レンズを付けて撮影する。その組み合わせでなければ絶対に写せない「空気感」みたいなものは、厳然として存在すると思っています。
古くはフィルムカメラの時代、コンタックスのGシリーズにリバーサルフィルムを詰め、ビオゴンやプラナーを付けて撮った写真をライトボックスで見たときのあの感動。
デジタルの時代になっても、5Dや5D2にツァイスやLレンズを付けて撮った写真は、やっぱり他のカメラで撮った写真と明らかに違うんですよね。
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これは5Dにツァイスプラナー50mm F1.4を付けて撮った写真。なんでしょう、このキラキラした描写は。
 
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僕が一番好きなキヤノンEF50mm F1.2Lで撮影。こういう絵が撮れるからフルサイズが手放せないのですよ…
 
そういうフルサイズならではの魅力は分かっていても、でもやっぱり重いものは重い。カメラが大きいから、荷物が増えるとカバンに入りきらなくて困ることだって少なくありません。
だから、もうフルサイズは本当に「勝負カメラ」だと割り切るようになりました。僕の日常のカメラはミラーレスのGH3やX-E1で、勝負をかけるときだけ、代打の切り札として御大5D3が登場する、というわけです。ミラーレスが「使える」ようになったここ1年は、特にその傾向が強くなりました。
 
それが、まさかこんなことになるとは。
 
 
■RX1を購入しました
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はい。RX1です。
発表当初は「フルサイズでコンデジなんて、AFが遅くて使い物にならないはずだ」「僕は50mm派なので、35mmだと広すぎるんだよね」とか、色々とネガティブな理由を付けてスルーをするつもりだったのですが、ちまたに出てくる写真を見て、やっぱり我慢できなくなりました。
 
だって、フルサイズが毎日持ち運べるなんて、まさに理想中の理想カメラじゃないですか!僕はそれをもう何年も待ち望んでいたはずのに、今さら買わない選択肢なんてあったんですか!という話です。
だから、ずっと売れずに大切に保存していたライカMPをついに売りに出し、それでRX1を購入することにしたのです。ライカMPにしても、RX1に買い換えられるなら本望というものでしょう。
 
 
■違和感
で、さっそくバリバリ使ってみました。すでにそれなりの枚数を撮影しているのですが、実は未だに違和感は拭えません。それはなにか。一言でいえば「このボディからこんな絵が出てくるのはやっぱり不自然」という違和感です。
まあピント面は薄いし、解像度は驚くほど高いし、高ISOでもビクともしないし、どんなに過酷な条件で撮影しても白飛びや黒つぶれが驚くほど少ないし。
そりゃ、考えてみるまでもなく、フルサイズセンサーを積んでいるわけですから、当たり前といえば当たり前なんですけどね。
でも、やっぱりそんな画像がこの小さなボディから出てくると、調子が狂います。
 
考えてみれば、僕自身「素晴らしい絵は巨大なカメラボディから生み出される」「大きいカメラの方がキレイに撮れる」という先入観がすり込まれているからなんでしょうね。
確かに、それは一面では真理です。ケータイよりはコンデジ、コンデジよりは一眼レフ、一眼レフよりは中判カメラの方が画質が優れているのは間違いありません。で、その僕の認識をあざ笑うかのように見事に下克上をやってのけたのが、このRX1なんだよなあと思うわけです。
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■「コンデジ」がメインカメラになる痛快さ
さらに面白いのは、この「コンデジ風情」が、今や僕のメインカメラになりつつあるってことです。
今までの常識は「大きいカメラ=メインカメラ」「小さいカメラ=サブカメラ」でした。それはもう、誰もが疑う余地のないほど当然のことです。
一眼レフをメインに使い、サブとしてコンパクトやミラーレスを使う。登板機会の多寡はともかく、やっぱりここぞという場面ではメインカメラ=一眼レフが登場し、それ以外の場面では軽快なサブカメラが活躍する。
これが今までの常識だったわけです。それは、フィルム全盛時代に高級コンパクト(Tシリーズ、TC-1、GRシリーズなど)がもてはやされた頃から今まで、全く揺らぐことはありませんでした。どんなに良くできていても、コンパクトは所詮コンパクト。いざという時に一番信頼できるのは「大きいカメラ」でした。
 
その常識が、RX1購入を境に僕の中でガラガラと崩れていきました。
気づけば、僕の中ではRX1が「メインカメラ」の地位を占めつつあるんですよね。これはすごいことです。革命的と言ってもいいんじゃないでしょうか。
だって、そこらで売っている倍以上の大きさのAPS-Cカメラはもちろんのこと、フルサイズセンサーを積んだ一眼レフだって、キットレンズ相手だったら、描写では決して負けないんですよ。こんなちっちゃいのに。
こんなコンデジ然としたカメラが、一眼レフと対等どころか、一番空気感のある写真が撮れるとなったら、そりゃ他のカメラの出番が減るのは当たり前です。
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■メインカメラを毎日持ち運べる喜び
RX1を買ってからというもの、毎日持ち運ぶカメラはRX1意外に考えられなくなりました。ついこの前まで、X-E1だ、GH3だと言っていたのがなんだったんだというくらい、RX1一択です。
だって、フルサイズセンサーですよ。下手したらフラッグシップのα99よりもトランスルーセントミラーとか余計なものを置いてない分、RX1の方が描写が良いとすら言われ、いわば35mm焦点域に限定すればソニー最高峰の実力を持った、そんなカメラがポケットに入っちゃうんですよ。
フルサイズセンサーを日常的に使うことを半ばあきらめていた僕にとっては、これ以上の福音があるでしょうか。またこうして、日々フルサイズのカメラを持ち運べるようになったこと。これを幸せと言わずしてなんと言えばよいのでしょう。
 
近頃は「望遠域が必要なとき」に限って、X-E1やGH3が出動するようになりました。もちろん、この辺のミラーレスの良さは、たとえRX1が登場しても色あせるものではありません。でも、もう広角系だったらミラーレスの出番はあんまり考えられなくなってきたなあ…
望遠やマクロ系に特化して整理した方がいいのかなあ…
 
RX1を評して「現代のコンタックスT3」という方もいるようです。確かにレンズのスペックなど、成り立ちはとても似ています。
でも、それではRX1の本当のすごさは半分しか表現できていません。
RX1のすごさはそんなもんではなく、あらゆる一眼レフも含めて、全てのデジタルカメラの中でナンバーワンと言えるほどの描写性能を持つ、モンスターカメラなんだと思うのです。
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■ちなみに使用感はどうなのよ
 
【AF】
買う前にさんざんAFが遅いに違いないとか腐してたわけですが、実際使ってみると、思った以上にちゃんと動きます。(期待値が低かったという側面も否定しませんが)
このAFのスピードを他の機種と比較すると、X-Pro1やX-E1とは(組み合わせるレンズにも寄りますが)同等かちょっと上。GH3やOM-Dにはかないません。動体はちょっと苦手。
 
【操作フィーリング】
いつもこだわるボタンやダイヤルの操作感ですけれど、レンズの絞りや露出補正などのダイヤルのフィーリングは抜群と言ってよいでしょう。良くここまで高級感のあるタッチにできたもんだと感動するレベルです。このタッチは、現在販売されているカメラの中でも最高の水準じゃないかしら。
一方で、背面の十字キーや各種ボタン類のタッチはちょっと残念。ブニブニしていて、あまり気持ちの良いクリック感がありません。ちなみに、このボタンのタッチは個体差があるようなので、これから買う方はしっかり触って確認した方がよいです。
 
【サムグリップよいね】
オプションのサムグリップを付けてみましたが、これ、期待以上に良いです。RX1は外付けファインダーでなく背面液晶で撮影することが多いと思うのですが、その場合は手ぶれがどうしても多発してしまいます。そこでこのサムグリップを付けると、多少なりともグリップが安定し、ぶれを最小限に抑えることができるようになります(と思います)。
取り付けると多少上下にガタ付くのが気になりますが、見た目的にもアクセントになりますし、なかなかよいのではないでしょうか。

ソニー サムグリップ TGA-1

ソニー サムグリップ TGA-1


 
【RX1のセッティングでは「周辺光量」の補正はオフ】
僕の好きなRX1のセッティングは、レンズ補正(周辺光量)の設定「オフ」です。
写真の隅々まで均質な絵を得たいと思ったら周辺光量も補正するべきなのでしょうが、フルサイズならではの「空気感」を味わいたいなら、この設定は絶対にオフです。
僕は、この設定ができるからこそRX1を買ったと言っても過言ではありません。
これをオフにするだけで、フォトショップで加工したのとは全く違う、レンズ本来が持つ独特の描写が得られるようになります。
RX1はただでさえ「写りすぎる」くらいの性能があります。その性能をむしろ、レンズの「味」を楽しむ方向に多少割いてあげてもよいのではないでしょうか。RX1は、ツァイスの「味」を十分に楽しむ余裕のある、そんなカメラだと思います。
 
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ということで、ソニーさんの蛮勇英断に感謝。よくぞ作ってくれました。このカメラはそう簡単にモデルチェンジできないでしょうが、ぜひ作り続けて欲しいものです。
 
おかげで購入以来、僕のカメラへの物欲は、パッタリと止まりました。
まあね、この満たされてしまった感がいつまで続くかは分かりませんが、もう少し画角が狭い望遠寄りのRX1とか、AFが爆速になったRX1とかが出てこない限りは、しばらくは心穏やかに写真を楽しめるようになるのではないかと思っています。
 
ソニー デジタルスチルカメラ Cyber-shot RX1(35mmフルサイズCOMS) DSC-RX1

ソニー デジタルスチルカメラ Cyber-shot RX1(35mmフルサイズCOMS) DSC-RX1