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飲食店の立場からO2Oの本質を考える

グルメ系のウェブサービスは山ほどあるわけですけれど、これから結構大きな地殻変動が起きると思うんだよね、という話。そしてなんで僕がトレタを始めたのかという話。
 
■これまでのグルメサイトのKPIはPVだった
グルメ系サービスといえば食べログぐるなびホットペッパー。これが日本における三強と言ってよいでしょう。これらが今までの日本のグルメ系サービスの発展を支えてきた牽引車だと思います。
で、これらのサービスの根本的な成り立ちはどこにあったかというと、「PV」だと思うのですね。
実際、ぐるなびさんが加盟店に提示するレポートの一番重要な指標は「アクセス数」ですし、ぐるなびさんからの営業トークで一番典型的なものは「もっとアクセス数を増やした方が来店に繋がると思うので、○○の特集に掲載してみませんか」というものでした。(豚組の経営から離れて久しいので、今は違うかもしませんが)
食べログが成功したのも、つまるところSEOで圧勝したからだと思うんですが(場合によっては店舗の公式ページよりも上位表示されるんですからねえ)、それにしたって突き詰めればPVってことだと思うんですよね。食べログではレビューだとか点数だとかが大きく注目されがちですが、いやいや、彼らの本当の強さはSEOだと思うんです。強いSEOが大きなPVを生むからこそ、レビューやスコアが圧倒的な影響力を発揮できるわけです。
 
■PVは来客に繋がるのか?という疑問
一方で、飲食店側からすると「アクセスが多いからと言って、それが本当に来店に繋がっているの?」という疑念は昔からありました。
どれほど多くの人に見てもらったと言っても、それが本当に来客に結びついているかどうか、確証はどこにもありません。クーポンで効果測定してください、というのがグルメサイト側の主張だった時代もありましたが、今ではそれも無理。だって、クーポン利用のお客様の相当数は、「お店を決めた後にクーポンを探す」という行動になってしまっていますから。中には、お店に入ってからスマホでクーポンを探すという人だっています。
結局のところ、グルメサイトのPVがどれだけ集客に繋がっているかは誰にも分かりませんし、検証のしようもありません。まあこれまでのグルメサイトは根本的に広告と同じ構造ですから仕方ないんですけどね。
とはいえ、これは飲食店を経営する側からすると「モヤッ」とするわけです。現場では原価率や水道光熱費やらを必死に節約しながらカツカツで利益を必死に出そうとしている一方で、なんというか非常にどんぶり勘定でお金を持って行かれる感覚になる。もちろんグルメサイトの人はそんなつもりはないでしょう。彼らは彼らで誠意を持って飲食店の役に立とうとしていても、そもそも構造的に費用対効果が明確にできない以上、これは仕方ないのですよね。でもこの構造的な問題が、回り回って飲食店のグルメサイトに対する不信に繋がったりもするわけです。
 
■昔から理想にチャレンジした人たちはいました
でも、そういう「モヤッ」とした落ち着きの悪さに気づいている人は昔からいまして、成果報酬モデルを試みたサービスもありました。たとえば、その昔には「モック」という会社があってですね。上場もしていたのですが、今は跡形もありません。
彼らが2000年に手がけたサービスの一つに、宴会エージェント事業「幹事さんいらっしゃい!!」というものがありました。このサービスはまさに成果報酬型で、宴会の幹事さんがモックに電話で依頼すると、モックがオススメのお店を選び出して、そこに予約まで入れてくれるというものです。もちろんビジネスモデルは手数料型で、後日、モックからお店に「送客手数料」が請求されます。(お客様は無料です)
でもこのモデル、うまくいかなかったんです。なぜなら手数料が高かったから。モック側からすると、オペレーターを置いて予約手配に人を動かしてそれに見合う収益を上げようとすると、宴会料金の10%とかを請求しないと割に合わないわけですが、一方で飲食店からすると10%も持って行かれたら利益なんて出ないよ、となってしまう。すると、ある程度の集客力のあるお店にとっては全くメリットのないサービスとなるわけで。
結局のところ、それでも閑古鳥が鳴くよりはいいや、と割り切ってサービスを利用する「暇なお店」ばかりがモックに登録することとなり、「モックから紹介されるお店は残念なお店ばっかじゃん」と感じたユーザーがどんどん離れていくことになってしまうという悪循環に陥ったのです。
結局のところ、これまでは成果報酬モデルは成立しないというのが業界の半ば常識となっていて、広告モデル(&一部のユーザー課金)の事業だけが生き残ってきたというのが、グルメサイトの歴史でもあるのですね。
 
■PVからCPAの時代へ
でもそろそろ環境が大きく変わろうとしています。スマートデバイスが登場し、クラウドが普及した今、技術的な前提条件は過去とはまるっきり異なっています。今までは逆立ちしてもできなかったことが次々できるようになってきていて、もちろんグルメサービスその大きな環境の変化によって激変するんじゃないかと思うのです。
グルメサービスでも、決済とかクチコミとかいろんなものが変わりつつあるわけですが、その中でも僕が期待しているのが、まさに「送客手数料モデルよもう一度」であり、それを実現する一つの方法論が「ウェブ予約」なのです。まあ、だからこそトレタを始めたわけですけれど。
つまりこういうことです。「A」というグルメサイトでお店を見た人がそのままそのページで予約までしてくれれば、お店からは明確に「グルメサイトAから送客された」ことがわかりますよね。そしたら、その送客実績こそが課金の根拠となります。もちろん、モックのように間に人を介在しませんから、費用感は全く異なって、極めてリーズナブルな水準で提供が可能になります。
これはつまり、グルメサービスのKPIが、「PV」から「CPA」に変わるということなのですね。PVを根拠にしたこれまでのサービスと違うのは、獲得コストが明確になるという点。飲食店からすると極めて納得性の高い指標をベースにしたサービスが実現できることになるのですね。
こうして、飲食店が今後PVでなくCPAに対してお金を払うようになるのであれば、グルメサービス自身もそれに合わせて変わっていかざるを得ないのではないかと。
飲食店はそもそもコスト意識の非常に高い業界です。それでも、これまで技術的に不可能だったから「どんぶり勘定」が通用していたわけですが、その前提が変わり、費用対効果が明確になるなら、そちらのモデルに一気に移行していくのは、実に自然なことではないかと思います。
 
■飲食店にとってのO2Oとは
ということで、巷ではO2Oという概念が普及して久しいのですが、実は飲食店にとってのO2Oの本質とは、PVからCPAへの移行であると解釈した方が正しいんじゃないかと思うんですよね。一部では、「オンラインで集めた人をオフラインに連れてくる」ことをO2Oと解釈している人がいますが、そこは本質じゃないよなあと。オンラインからオフラインが断線せずに繋がって、集客の費用対効果が明確になることこそがO2Oの真の価値なんではないかと。
飲食店からすると、ウェブ上で集めたユーザーさんのうち実際にどのくらいの人がお店に来店してくれているかを「見える化」し、ウェブ上で集めた人数ではなく、実際に来店した人数に対して集客コストを支払うモデルに移行していくことが、O2Oの意義なんですよね。
 
そんなわけで、トレタの存在意義はまさにその数値を明確にする基盤を作るところにあると考えております。
ちなみに、KPIがPVからCPAになったとき、グルメサイトのあり方は激変していくわけですが、それが具体的にどういう変化になるのかはまた別の機会にでも。いったんは皆さんの想像力にお任せしておきたいと思います。
 
 
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