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@hitoshi annex on hatena

@hitoshi annexがはてなに引っ越してきましたよ

アプリのリリースに必要な「引き算担当」について

起業してアプリを出す。
一言で言ってしまえば簡単なんですけど、最初のそのアプリリリースの時に失敗する人が少なくない気がします。
 
僕の観測範囲だけでも、独立してアプリを出そうとして開発に失敗、「作り直し→リリース延期」となるケースを定期的に目撃しますので、それなりにそういう失敗をする人はいるんじゃないでしょうか。これが20代の若手が失敗したというならまだ分かるんですが、経営者としてすでに十分な実績のある、僕自身も尊敬するような方がその陥穽に陥ったりしていますので、これはもう能力とか才能の問題でなくて、むしろ「知識」の問題なんじゃないかと思うんですね。
そういう僕も、kiznaというアプリを出そうとして落とし穴にはまってしまい、結局日の目を見なかったという苦い経験をしていますので、こういう経験はちゃんと共有して、無駄な犠牲者が出ないようにすべきだと思うわけです。
 
というわけで、初めてアプリを出す方へ、僕から一つだけお伝えしたいこと。
 

【アプリを出すときは、機能を徹底して削る担当者を決めるとよいと思います】

 
リーンなんちゃらでも「MVP」という考え方がしきりに喧伝されているので、そんなの分かってるよという人も多いでしょうが、これ、知ってるのと実践するのでは全く違うんですよ。僕がkiznaで失敗したときだって、最初から「機能はできるだけ削ろう」って言ってましたからね。それでもやっぱり失敗するんですよ。
 
では、なぜ僕が知っていながら失敗したかというと、僕が機能を削る役割も担当しようとしたからなんですね。
 
冷静に考えれば、創業者(←このエントリーでは、僕の経験に基づいてエンジニアでない人が創業社長をやっていると仮定しています)が機能を削る役割まで担うなんてのは至難の業です。そりゃそうです。彼の頭の中にはおっきな理想の世界が広がっていて、あれもこれもしたい、あの機能もこの機能も大事、全部やらなきゃ自分の目指す世界は実現しない!ってモードになってるわけです。一方で、その状態から本来の意味での「MVP」を作るとしたら、控えめに言っても機能を1/10くらいまで削らないといけません。
盛り上がっている自分を抑えつつ、自分の考えた大事な機能を無慈悲にバサバサ削るなんて、よっぽどの自制心と自己客観視ができる人でなければ無理でしょう。でもそんなのほとんどの起業家にはできないと思います。てか、それができるような人はそもそも起業家に向いてないかもしれない。
 
なので、創業者がそれをやろうとしても上手くいかないと思うんですね。結局削りきれないで終わってしまう。
だからそれは別の誰かに任せてしまうべきなんです。
 
僕がkiznaの失敗のあとにミイルやトレタを無事にリリースできたのは、増井という得がたい仲間ができて、彼が徹底的して「削り屋」を担ってくれたからです。
彼はもちろんエンジニアとして非常に希有な存在なのですが、それ以上にすごいと思うのは、ビジネスの意義やゴールをしっかり理解しながら、その文脈の中で「この機能はいらないですよね」「ローンチ時にこの機能があったって誰も使わないですよね」と冷徹に指摘ができる点にもあると思っています。片方ではどの機能実装が技術的に大変そうか判断をしながら、もう片方ではビジネスとしてどの機能が重要かを判定し、その両者のバランスを取りながら「実装は重いけれど、機能的には緊急度が高くないもの」を見つける作業をしてくれるわけです。
ちなみに彼がさらに上手いのは、ここでのポイントを「重要度」ではなく「緊急度」という基準で判断を求めてくることなんですね。僕自身、「重要度」で聞かれたら「全部重要に決まってるじゃん」としか答えられないわけですが、「緊急度」で聞かれると「ああ、確かに最初にはいらないね」と素直に答えられるんですね。
もちろん「あった方が良いと思うんだけどなー」くらいの温度感だったら、容赦なく「じゃあ今じゃなくていいですね」と切り捨られます。
 
こんなふうに、トレタのローンチに際しては、僕は機能を増やす役割に専念して、彼は機能を減らす方に全力を傾けるという役割分担で開発を進めました。もちろんそのすり合わせは常に「緊急度」で行われました。そしてこの役割分担と進め方によって、僕の当初の機能要望は見事に1/10まで削られたというわけです。
このおかげでトレタはほぼ計画通りのスケジュールでリリースできましたし、シンプルで尖った、そして信頼性の高いサービスが最初から実現できたのだと思っています。もちろん僕の立場からしても「間に合うのか」「ちゃんと動いてないじゃないか」みたいなストレスを感じずに済むわけですから、結果的に営業活動により多くのリソースを割けるようになるなど、非常に多くのメリットがあったわけです。
 
そういうわけで、これから独立してアプリを出そうとお考えの方は、是非「削り屋」を見つけて頂くと良いのではないかと思うのですが、でも削るのが上手な人って、意外と少ないんですよね… そもそも社長が「欲しい」というのに対して正面から「それいらんでしょ」と言うわけですから、起業家と対等に遠慮なく話せる人じゃないといけないわけで… じゃあ投資家ならできるかといえば、技術的理解があって、起業家と同じように事業を理解して、同じ熱量、同じ目線で対等に議論できる投資家もいそうでいないですしね…
こういうことをできるのがCTOって言ってしまえばそれまでなんですけど、ただ技術的に優れた人が必ずしもこういう役割を担えるとは限らないところが、またモヤッとしますね。
 
 
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