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FUJIFILM X-E1はX-Pro1の進化形だった

富士フイルムから、新型のミラーレスカメラ「X-E1」が発売されました。
先行展示の実物をビックカメラで手にして以来、X-Pro1から買い換えるかどうか悩み続けていましたが、結局X-Pro1を下取りに出して購入することにしました。

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マップカメラの売り場では隣にソニーの「あの」RX1も並んでいたのですが、それも十分に触った上で、それでも僕はX-E1を選びました。最大の理由は価格、といえば身も蓋もないんですが、それだけじゃない、やっぱりX-E1には積極的に選ぶ理由がたっぷりあると思うのですね。
購入して最初の週末にしっかり触った感想として、僕はX-E1を買った判断は正しかったと思いましたので、まずはファーストインプレッションをば。
 
僕は以前にもX-Pro1を買って絶賛するエントリーを書いたのですが、X-Pro1からX-E1に至るラインナップは、本当に何とも言えない良さがありまして、たくさん欠点はあれどそれを補ってあまりある魅力があるという、実に珍しいカメラだと思います。
僕はそんなにこらえ性がないので、ちょっとでも欠点があると気になってしまって使わなくなったりするのですが、このX-Pro1だけは全く違いました。
好きなカメラって、普通は撮影枚数がどんどん増えるんです。でも、X-Pro1は愛してるし愛着もあるのに、枚数はそんなに伸びないんですね。なんでしょうこれ。こんなカメラは初めてです。
 
キヤノン EOS 5D mark IIIが「何でも撮れる安心感のあるカメラ」だとすると、オリンパスOM-D E-M5は「いちばん楽ちんなカメラ」、そしてX-Pro1は「一番好きなカメラ」です。
失敗が許されない時は5Dを持っていき、荷物が多いときはOM-Dを選び、じっくり撮影を楽しみたいときはX-Pro1を選びます。
こう考えると、X-Pro1を選ぶときが一番気持ちに余裕があるんですよね。単焦点レンズ一本。足を使ってズームして、それでも撮れないものは潔くあきらめる。肩に力を入れて「いい写真を撮ってやる!」と戦うカメラではなくて、まさにスローカメラ。失敗作もたくさん撮れるけれど、たまに一生の思い出になるような写真が撮れるカメラ。
それがX-Pro1なんだと思います。だから、カメラのルックス的には旅に持っていくという使い方を夢想するのだけれど、むしろいつも持ち運んで、なにげなく日常を切り取ってみる方が合っているのかも、とも思います。
ブレッソンはライカに50mm一本をつけて街をスナップし、数多くの傑作を残しました。X-Pro1は、まさに現代のそれなんじゃないかと思うわけです。
 
そして今回のX-E1は、そんなX-Pro1の良さをさらにいつでも楽しめるように、その良さをしっかり抽出してコンパクト且つ美しいスタイルにまとめた、とても良くできたカメラだと思います。
 
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X-E1 + FUJINON 35mm F1.4
 
小ささは正義
まず、なんと言っても小さい。X-Pro1はあらゆる雑誌やブログで「ボディがでかすぎる」と指摘されてきました。僕としては、ペンタプリズムの出っ張りがない分、OM-D(あれは正確にはペンタプリズムじゃないですが)よりも持ち運びしやすいんじゃね?という感じで、そんなに持てあましたことはなかったのですが、やっぱりX-E1に触ったら「X-Pro1、でかかったわw」と実感しました。
そして、一日使うと、やはりX-E1のサイズの方がぴったりと手になじむようになりました。
 
レスポンスも良くなった
さらに、レスポンスもX-Pro1より向上しています。
シャッターのフィーリングも良い。何よりAFが高速化されていて、X-Pro1で感じたストレスはかなり軽減されています。X-E1のAFはファームアップしたX-Pro1と同等と言われていますが、ボディが小さくなり取り回しが良くなったせいか、X-Pro1よりもより軽快に動いてくれる印象があります。
とはいえ、AF速度はやはりOM-DやNikon 1あたりと比べてしまうと物足りなさが残るのも事実。また、静物でなく子供や動物のように動き続けているものへの合焦はとても苦手のようで、ずっとフォーカスが合わずに迷っていることも少なくありません。Nikon 1は像面位相差を採用しているので速いのは当然として、OM-Dのあの爆速AFはコントラスト方式ですからね。フジだってやればできるはず。なので、ここはこれからのさらなる進化を望みたいところではあります。
 
ダイヤルの快感
シャッターダイヤルと露出補正ダイヤルはX-Pro1のスタイルをそのまま引き継いでいますが、これもX-Pro1より改善されています。ダイヤルを回したときの適度な重さ。ローレットの刻み。この辺のチューニングが素晴らしくて、回すだけで「高級なカメラを操作している」という実感が沸いてきます。
ソニーのRX1を触ったときに一番感動したのは同じくダイヤル類の感触なのですが、X-E1はそのRX1の高級感に決して負けていません。
この辺は高級車のドアを閉めたときの感覚に通じるところでして、些細なことかもしれませんが、しょっちゅう使う部分のクオリティは使い続ける上で満足度に直結するところですからね。大事です。とても大事。
 
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X-E1 + FUJINON 35mm F1.4
 
美しすぎるファインダー
さらにファインダー。
液晶モニターは小型化に伴って小さくなりましたが、その分、EVFはX-Pro1から強化されています。
このEVFがいいんだまた。もはや光学ファインダーよりも美しいとすら思えます。
ポジフィルムで撮った写真をライトボックスで見たときの、あの美しさと言ったら良いのでしょうか。
とにかく、写真をどんどん撮りたくなるような、そういう気分にさせてくれる美しさがあります。
動体を撮影するときの追従などには若干の不満は残りますが、それでも、光学ファインダーでなくEVFを積極的に使いたいと思わせてくれる、そんなクオリティです。
もともとX-Pro1はOVFの美しさに定評があったのですが、X-E1ではこのOVFをバッサリと切り捨ててきました。それでは商品価値が落ちるのでは?と心配する向きもありましたが、しかしそれは杞憂でした。むしろEVFの出来が良いのでOVFが不必要になったのだ、ということだったのかもしれません。
そのくらい、今回のEVFは良くできています。
僕が(価格差はともかく)RX1よりもX-E1を買おうと思った最大の理由はまさにここです。この美しいEVFがあるからこそ、写真を撮ることが楽しくなると思ったのです。
 
やっぱり絵がいい
そして何より、X-Pro1とX-E1に共通する最大の魅力が、カメラの吐き出す絵そのものです。
X-Transというフジ独自のセンサーはローパスフィルターが不要なので、フルサイズ一眼レフすら凌ぐほどに解像感の高い写真が撮れます。実際、5D3よりもX-Pro1の方が解像感がずっと高くて驚いたことは一度や二度ではありません。ローパスがないことから、高感度にも驚くほど強く、ISO 3200は全くの常用感度です。
さらにフジノンレンズの出来の良さ。単焦点だから当たり前というレベルを遙かに超えて、今売られているレンズの中ではトップクラスの実力なのではないでしょうか。発色、ボケ味、立体感、解像力。なんというか、それらが渾然一体となった出来の良さを感じます。
それに加えて、フジならではの「色」があります。VelviaProviaなど、フジが昔からフィルムで培ってきた「色」のノウハウは、このカメラでも遺憾なく発揮されています。特にVelviaモードで撮影したときのあのこってりして深みのある色は、一度はまると決して忘れられません。
僕自身、5DとかOMで撮影した写真の色味をフジの発色に近づけたいと思って、PhotoshopLightroomで何度も格闘しているのですが、なかなかあの色は出せたものではありません。今のデジカメの中では、X-E1とX-Pro1は、唯一、RAWではなくJPEGで撮るべきカメラだと言えるでしょう。僕ら素人が現像したって、カメラのこの現像の美しさには絶対に敵いませんから。
 
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X-E1 + FUJINON 35mm F1.4
  
★★★
 
ということで、X-Pro1に比べると、X-E1は良い意味で「普通のカメラ」になったと思います。癖も少なくなり、複雑で大きいOVFもなくなり、EVFも見やすくなり、レスポンスも良くなり、ホントに使いやすくなりました。とはいえ、まだまだ他のミラーレスに比べると敷居が高いのも事実。おそらく、このカメラの良さを理解できる人は、カメラに「はまる」素養をたっぷり持っている人だと思いますので、是非店頭ででも手にとって試してみてください。
 
それにしても、こういうデジタルカメラが登場したこと、そしてそれを使える僕らは本当に幸せですね。そういやこの状況って、その昔フィルムカメラの世界でコンタックスTシリーズ、ミノルタTC-1、リコーGR1あたりが続々登場した頃に似ている気がします。ようやくデジカメも、成熟期に入ってきたということなのでしょうね。