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【告知】WebSigにお呼ばれしたので、トレタのお披露目をしてきます

まさかこの僕がですよ。まさかWebSigに「講師」として呼ばれるなんて。
生きていると自分でも驚くようなことがあるもんですね。
 
ということで、ふつつかものではございますが、錚々たる講師の方々に紛れ込んで、10月5日 (土)に八王子でお話をさせていただきます。
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WebSig1日学校の詳細はこちら

 
今回のWebSig1日学校のテーマは「Re-design:あたりまえになったWebを考えなおす」とのことで、ウェブが当たり前になった時代に、改めてサービスやツールはどうあるべきかを考える、というのが主題になるのかなと思います。
 
そこで僕も、新会社の新サービス「トレタ」に絡めて、その辺のお話をする予定です。
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ウェブが当たり前の時代になったと言っても、それはまだごく一部の方にとっての話であって、たとえば飲食業界の現場では、まだまだウェブやネットの力を当たり前のように利用できる環境は全く整っていないのですね。
じゃあ、そんな技術の恩恵に浴すことができずにいる「その他大勢」の人たちが、もっと簡単に、もっと手軽に、ウェブやネットを使いこなせるようにするためには、テクノロジーはどうあるべきなんだろう。
本当の意味でウェブが「あたりまえ」になるためには、僕らはどうしたらいいんだろう。
今の技術をどうデザインし、どんな風にパッケージしたら、飲食店が幸せになれる仕組みが作れるんだろう。
たぶん、それを実現するには、今までの業務系ツールの常識をいったん全てリセットして、ゼロベースで「現場のユーザーにとっての使いやすさ」を徹底して追求するアプローチが必要なんだと思うのです。そのときには、今までのBtoBの当たり前は当たり前ではなくなって、全く新しい常識が生まれるのかもしれません。
 
WebSigでは、そんな観点から、僕らが今開発を続けている新サービス「トレタ」をご紹介します。公式にはこれが本邦初公開になるんでしょうかね。
まだ本リリースまではちょっと時間があるのですが、当日は実際に稼働している実物も持参できると思いますので、コンセプト含め、がっつりお披露目させていただきます。
 
なお、勝手ながら当日のセッションの内容は(正式リリースまでは)非公開とさせていただくことになると思いますので、トレタに興味のある方は、是非遊びに来ていただければと幸いです。
 
じゃ、みなさん、八王子でお会いしましょう!

新会社設立のご案内

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突然ですがお知らせです。
 
私、中村仁はこのたび新会社「株式会社トレタ」を設立しました。併せてフェムトグロースキャピタルさまおよびフェムトスタートアップさまから合計1億円の投資を受けて、現在、新サービス立ち上げに向けた準備を進めております。
 
トレタは、飲食店を革新するツールを提供する会社です。
 
飲食店は労働集約的な側面が強く、「スタッフが丁寧に手間をかける」ことが価値を生む業種です。
しかも、これほどIT技術が普及した現在でも、現場では常に多くの従業員を抱え、ありとあらゆる業務をアナログ・手作業でこなしています。私自身、豚組をはじめとする店舗で現場に立ってきて、「飲食の現場はテクノロジーの恩恵からは遠いなあ」と痛感してきました。
 
そのような中で、料理のクオリティを高め、サービスの質を高めて続けていくのは容易なことではありません。飲食店の現場は日々膨大な仕事を抱え、それに追われているのが現状です。増え続ける現場の負担をどう軽減するかは、現場のスタッフのみならず、経営者にとっても最大の悩みと言ってよいでしょう。
「元気な飲食店を増やし、日本の豊かな食文化をもっともっと発展させていくためには、飲食店の現場の課題を解決し、少しでも働きやすい環境を作らなければ。」
それは飲食店を経営してきた私自身が長らく持ち続けて来た強い願いです。
 
飲食店がもっとハッピーになれるために、テクノロジーにできることはたくさんあるはずです。
 
今までの飲食業界では、パソコンやネットは「難しい」「怖い」「お金がかかる」ものとして敬遠されてきましたが、クラウドやスマホが普及した今、気がつけば、テクノロジーはすでに「現場の誰もが簡単に使える、やさしくフレンドリーなもの」になっています。今の技術を持ってすれば、飲食店の課題の多くが解決できるのです。
 
私たちは、自らのサービスを通じて、外食産業の歴史に「デジタルテクノロジーが現場の味方になった日」を刻みたいと思っています。
 
トレタが目指すのは、トレーニングせずとも誰でも使えるほど敷居が低いのに、そのツールを使うだけで劇的に業務が改善され、現場で働く人がハッピーになり、ひいてはお客様にも満面の笑みをもたらす、そんなサービスを提供することです。
もちろん、真に使いやすいツールを提供するには、ただ機能を並べただけでは不十分で、その根底には確固とした思想や哲学が不可欠です。そんな思想や哲学、そして理想をしっかりと持った会社にしていくことも、私の大切な責務だと思っています。
 
現在、開発は着々と進んでいます。
秋に予定されるリリースの日を、是非楽しみにお待ちください。
 
 
【FrogAppsについて】
トレタの立ち上げに伴って、私は7月22日をもって株式会社FrogAppsの取締役を辞任いたしました。私自身はこれからはトレタに専念することになりますが、引き続き創業者/ファウンダーとして、そして1ユーザーとして、ミイルを力一杯応援していきたいと考えています。
FrogAppsでは、本当に多くのことを学ばせて頂きました。ミイルをお使いのユーザーの皆さまを始め、FrogAppsのお取引先・株主・チームのメンバーの皆さまには、この場を借りて深く深くお礼申し上げます。
トレタ共々、FrogAppsにも引き続き皆さまの暖かい応援をいただければ、サービスを生み出した一人としてこれ以上の幸せはありません。これからも、どうぞ宜しくお願い申し上げます!
 
 
【仲間を探しています】
トレタでは、仲間を絶賛募集しています。「飲食業界の歴史に名を刻む」という私たちの想いに夢を感じる方は、是非、一緒に挑戦してみませんか。
サーバーエンジニア、アプリエンジニア、デザイナー、マーケティング、営業など、様々なポジションで仲間を探していますので、是非お気軽にご連絡をいただければと思います。
興味のある方は、お気軽に下記のメールアドレスまでご連絡ください。いきなり「面接」ではなく、「まずは軽くお茶でもしながら、どんなことをやろうとしているのか、どんな会社にしようとしているのかを知りたい」くらいの冷やかしでも大歓迎です!(まだ設立したばかりで、会社のサイトはおろかロゴすらもできていなくてスミマセン)
お問い合わせ先: jobs@toreta.in
 
 
 

【お知らせ】『豚組食堂』を開店します

株式会社グレイスは、2013年4月28日、六本木ヒルズ・ノースタワーB1に新しいとんかつ店「豚組食堂」をオープンします。
2003年に「とんかつ豚組」が西麻布に開店してから約10年。豚組食堂は、豚組が培ってきた経験や資産を最大限に活かして、新しいとんかつ店の姿を提案します。
 
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「とんかつ豚組」というお店
「豚組」が生まれた当時、とんかつ業態は「B級グルメ」の代表格でした。
1,000円そこそこでお肉とご飯をお腹いっぱいに食べられる。安さとボリュームがとんかつの最大の魅力とされた時代は、長く長く続いていました。そして、とんかつのそんな位置づけに対して疑問を持つ人も、ほとんどいませんでした。
 
とんかつ店の側も、そんな世間一般の常識を疑うことなく、お肉や衣、そして油などを一所懸命節約し、少しでも安く提供しようという努力を重ねていました。結果、食材には少しずつ妥協が生まれ「とんかつはお腹いっぱいになるけれど胃がもたれる」と言われることも少なくありませんでした。
 
そんなとんかつ業態に新しい価値を持ち込んだのが「豚組」です。
豚組は、豚肉はもちろんのこと、ご飯やキャベツ、調味料の一つ一つ、取り皿の一枚に至るまで、一切の妥協を排して、世界最高/人類史上最高のとんかつを目指しました。結果として、イベリコ豚のとんかつ御膳(4,800円)を頂点に、「プレミアムなとんかつ」という新たなジャンルを開拓することに成功しました。
 
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徹底してこだわったとんかつがこれほどまでに美味しいとは。それは、豚組を始めた時の私自身の思いの原点です。メニュー試作の際、遊び半分で「最高の食材だけで作った、酔狂なとんかつを食べてみたい」と料理長にお願いし、それを食べてみたときの感動は今でも忘れません。その時の「とんかつってB級グルメじゃなくて、本当のA級のご馳走だったんだ!」という感動こそが、豚組を作る原点だったのです。
 
豚組を開店した当初は、その価値を認めてもらえるのか、心配な日々が続きました。実際、苦戦が続きました。
先日新社長に就任した國吉が入社したのは、まさにその豚組立ち上げの時期です。日々悩み、豚組らしいメニュー、豚組ならではのおもてなしを模索し、改善を重ね、今の豚組を築き上げたのは、國吉と料理長の力だと言っても過言ではないでしょう。
 
やがて努力は実り、豚組のとんかつへの思いは少しずつお客様に通じていきます。共感してくれる方が徐々に増え、生産者の皆さまにも認められ、豚組は高級とんかつ業態のパイオニアとして多くの方に認めていただけるようになりました。
 
 
そして「豚組食堂」という新しい挑戦へ
この「豚組食堂」は、その國吉が作り上げる第一号店となります。
 
豚組食堂を始めるに当たって、國吉と私とで議論をし、そしてたどり着いたテーマは「とんかつの原点に戻る」ことでした。
そのとんかつの原点とは、「とんかつは日常のご馳走である」ということです。そう、豚組が登場するずっと前からとんかつが愛される料理だった、まさにその原点に戻ろうと思うのです。
 
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豚組は、とんかつの真の価値を見いだし、新たな魅力を多くの方に提案してきました。豚組はとんかつという料理の可能性を大きく広げることに成功しました。しかし、それはあくまでも「ご馳走としてのとんかつ」であり、毎日気楽に食べられるようなものではありません。非日常、ハレの食事としてのとんかつが、豚組のとんかつでした。それは豚組の最大の魅力ですが、同時に限界でもあったのです。
でも、とんかつにはもう一つ、「日常食」であり、「ケの食事」としての大事な役割があります。
 
"毎日でも食べられる、等身大の食としてのとんかつ。"
 
それを考えたら、豚組にはまだまだできることがたくさんあると思いました。とんかつの価値を知り、徹底してとんかつのおいしさを追求してきた豚組だからこそできる、日常食としてのとんかつがあるはずだと思うのです。
そしてそれこそが、豚組食堂のテーマであるべきだと思ったのです。
 
お財布に優しい値段で、毎日食べられること。
胃に優しく、食べたら健康になれるとんかつであること。
毎日食べても飽きない、奇をてらわない本物のおいしさがあること。
そして、食べるとちょっぴり幸せな気分になって、元気が出てくること。
 
そんなとんかつが豚組食堂の理想です。価格はランチのお膳で1,000円前後から。この価格帯で、「本物」を出すことを目指したいと思います。
 
 
豚組食堂はこんなお店です
 
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豚組には、過去10年で開拓した、数十にも上る銘柄豚の仕入れ先があります。どの生産者の方も、誇りを持ち、大変なこだわりを持って豚を育てていらっしゃいます。
また、どんな油やどんなパン粉でどう揚げるとカラッと胃にもたれず軽いとんかつに仕上がるかなど、長い長い試行錯誤の経験もあります。
パン粉や調味料一つ一つも、長くブラッシュアップを続けてきました。
そして、とんかつに残りの人生を賭けると誓い、日々真剣にとんかつに向き合ってきた料理長と、その料理長の下で長く修行してきたスタッフがいます。
 
これらは全て、豚組の大切な資産であり、何にも代えがたい武器でもあります。
この武器を最大限に活用し、カジュアルで毎日食べられる、新しいとんかつのお店を目指すのが「豚組食堂」です。
 
豚組食堂では、本店と同じクオリティでとんかつを提供します。扱う銘柄豚も、そのどれもが実際に豚組で提供され、品質と価格のバランスが特に優れていると評価されたものばかりです。もちろん、すべて信頼のおける生産者さまのものばかりです。
 
本店と違うのは、取り扱う銘柄を大幅に絞り込み、コストパフォーマンスに優れる2〜3銘柄だけに集中し、扱う部位も絞り込むこと。厨房には最新鋭のフライヤーを導入し、効率的な調理を実現したこと。西麻布という不便な立地でなく、六本木ヒルズという集客と回転が見込める場所に出店したこと。動線やオペレーションを重視した、モダンな店舗設計にしたこと。初期費用を極力抑え、低コストでの出店を目指したこと。
そして、メニューを徹底してシンプルに絞り込み、スタッフのエネルギーをとんかつ一点に集中できるようにするという店作りのアプローチは、本店よりもさらに徹底させることで、低価格と高い品質をバランスさせたいと思っています。
 
 
皆さんの目の前でとんかつを作ります
豚組食堂の最大の特徴の一つが、「お店のど真ん中にある揚げ場」です。L字型のカウンターと奥のテーブル席に囲まれるように店舗の真ん中にオープンキッチンを配して、お客様の目の前でとんかつを調理するのが豚組食堂のスタイルです。
 
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今まで、商業施設に出店するチェーン店系のとんかつ屋では、このようなレイアウトのお店は不可能でした。なぜなら、チェーン系のとんかつ屋さんではセントラルキッチンによるオペレーションが一般的なため、お客様の目の前でとんかつを揚げるような厨房は実現できないからです。結果、これまではお客様から見えないところでとんかつを調理するのが一般的な店舗レイアウトでした。
 
しかし、豚組食堂は違います。肉をスライスし、衣をつけ、揚げるところまで、その全てを店内で、しかもお客様の目の前で行います。もちろん、セントラルキッチンに比べれば効率は落ちます。だから豚組食堂では、600円でお弁当を販売するようなことは絶対にできません。
 
しかし、それ以上に「調理工程を全てお客様にオープンにする」ことはとても大事なことだと思っています。
それは、ライブ感のあるお食事を楽しめるという楽しさの演出だけでなく、お客様の「安心」を高める上でもとても重要なことだと考えるからです。
オープンキッチンである以上、食材にも調理にも一切ごまかしはききません。例えば、安いお肉を仕入れ、スジを切って柔らかく感じさせるような小手先も通用しません。食材から調理工程までの全てをオープンにするのは、本物を出すお店にしかできないことです。
 
もちろん、豚組食堂の料理長には大変なプレッシャーがかかります。一挙手一投足をお客様に見られながらとんかつを揚げるなんてことは、普通のとんかつ職人だったら経験したことがないでしょう。
しかし、このオープンキッチンは、豚組のとんかつへの思いや理想が込められていると言っても過言ではありません。設計段階でも何度も議論し、最後は料理長も「やりましょう」と納得し、今では新しいとんかつ店を作るという目標に燃えているところです。
 
オープンキッチンのカジュアルなとんかつ店。商業施設のとんかつ店としては、初の試みかもしれません。しかし、このチャレンジを通じて、豚組食堂が新しいスタンダードを提供できるのではないかと思っています。
 
 
能書きはともかく、気楽で楽しい店なので遊びに来てね
ということで、思いを語るとキリがないのですが、とにかく豚組食堂はカジュアルで気楽で美味しいお店を目指します!
アクセスもいいし、価格も頑張って安くしてるし、近くに来たときには是非遊びに来てくださいってことです!!
最初の頃は、オープンキッチンの厨房スタッフも緊張しているでしょうし、店長もアルバイトさんもみんなガチガチになっているでしょうけれど、でもみんな、理想に燃えている仲間ばかりです!
國吉も店に泊まり込む勢いで頑張っていますので、ぜひ応援していただけると嬉しいです。
 
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ハコはできあがりました。メニューもできました。でもまだお店は完成していません。
一人一人のお客様が来てくれて、それで豚組食堂は完成です。
みなさんのお越しを、スタッフ一同、お待ちしております。
 

豚組食堂
東京都港区六本木6-2-31 六本木ヒルズノースタワー B1
03 3408 6751
11:00〜23:00 (22:30 LO) 年中無休
2013年4月28日オープン

 
 
Special Thanks
ケチケチ予算の中、予想を遙かに上回るステキなインテリアを作ってくれたアッタの戸井田さんと内山さん、大信工芸の高桑さん、本当にありがとうございました。とんかつ界に衝撃を与えましょう!
 

【お知らせ】株式会社FrogApps新体制についてのお知らせ

今日はミイルを運営する株式会社FrogAppsの組織変更のお知らせです。
 
この2013年4月12日より、共同創業者としてともに永く取締役を務めてきた高橋伸和が新たに社長となり、私は代表としてではなく、一取締役という形でミイルにかかわっていくことになりました。
高橋は、私が個人的には兄として慕い、仕事においては最も尊敬する人物でもあります。過去には日本ベリサインの取締役を務めた経験もあり、テクノロジーやセキュリティへの見識はもちろんのこと、ベンチャー企業における組織作りや、マーケティングの知識も豊富です。これからのミイルの成長ステージにおいて、高橋の経験や知見は非常に大きな力になるものと確信しています。そして、FrogAppsは高橋が率いる新体制のもと、ミイルのいっそうの成長を目指すことになります。
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左が弟、右が兄
 
 
■ミイルは新しいステージに進みます
ミイルは、リリース前の準備期間も入れると約2年間、私自身の思い入れの詰まった「個人商店」という側面が強いサービスでした。しかし、国内限定ながらダウンロードが30万に、「食べたい!」も2,000万が視野に入ってきました。今でも毎日50,000件以上の写真やコメント、「食べたい!」が投稿されるような、グルメサービス界隈ではユーザー参加率の最も高いサービスの一つになったと自負しています。
そしてこのような状況を踏まえ、サービスを運営する私たちも、ついに次のステージへに踏み出す段階に来たと感じました。
 
ミイルは新サービスとしてその価値をユーザーの皆さんに評価して頂く「0→1」の段階を終え、本格的な成長を目指す「1→10」の段階に入ったのです。
 
私の思いをよりどころにサービスを作るのではなく、もっともっとユーザーの皆さんの声に丁寧に耳を傾け、サービスに関わる全員がユーザー目線を大切にして開発にあたるような、そういうチーム体制もようやく整いつつあります。沢山のユーザーの皆さんの思いにこたえるためにも、「永続性」のあるサービスを作れる体制を今まで以上に強化していかねばなりません。
 
 
■新しいステージには新しいリーダー
高橋はまさにベンチャー企業で「1→10」を数多く経験してきた猛者です。
企業が急成長していく過程で、組織の中では何が起きるのか。そのとき制度はどうあるべきか。社員のモチベーションを高め、一人一人が力を発揮できる環境をどう作ったら良いのか。サービスや会社の「永続性」をどうやって確保したら良いのか。売上は?コストは?利益は?資金は?
高橋は、まさにベンチャー企業が急成長するときの激変を身をもって体験しており、FrogAppsでもこれまで、組織作りにおいて大きな力を発揮してくれてきました。
そんな今までを振り返れば、私たちのチームが次の段階に進化するフェーズにあたり、新たな歩幅でミイルを率いていけるのはまさに彼を置いてほかにはないと思っています。バトンを渡す相手として、彼以外の適任者はいないでしょう。
 
高橋はこれまでも非常勤取締役、つまり裏方として会社を支えてきてくれましたが、彼の組織作りへの知見が最大限に価値を生み出すのは、むしろこれからが本番なのだと思います。
 
そこで、今までは「表=中村、裏方=高橋」だったポジションをくるっと入れ替えて、「表=高橋、裏方=中村」という体制にしようというのが、今回の組織変更の基本的な考え方です。
もちろん、私と高橋の共同創業者二名のパートナーシップは今までと全く変わりません。今まで同様、いや今まで以上に、私と高橋は会社とサービスの発展に協力して当たっていくつもりです。もちろん、私がFrogAppsを辞めることは決してありません。渋谷のオフィスにも毎日通い続け、今までと変わらず高橋の隣のデスクで仕事を続けます。これからも創業者兼取締役として、サービスを生み出した原点を知る者として、私らしい貢献をしていきたいと思っています。
 
ですから、ユーザーの皆さんには是非期待していただきたいと思います。新しい体制のもと、これからのミイルは、今までよりももっと皆さんのそばに寄り添い、共に成長していけるサービスになっていきます。
 
 
■若い世代を活かす組織へ
今回の組織変更では、もう一つの大きな変化があります。それは、これからのミイルの開発を引っ張っていく中心メンバーは、我々取締役や創業者の面々ではなく、FrogAppsの新しい若いメンバーたちになることです。
 
創業以来、FrogAppsの最大の問題は「平均年齢が高いこと」でした。取締役は軒並み30代後半から40代です。健康についての話題で盛り上がるベンチャーなんて、世間を見渡してもそうそうないはずです。
平均年齢が高いベンチャーは、その経験を活かした老練な(笑)展開が強みではありますが、同時に経験に縛られてしまって大胆な発想が出てきづらくなったり、「蛮勇」を発揮しづらくなるという欠点があります。
そこで、今回の組織変更では「若いメンバーがのびのびと大胆に挑戦できる環境を作ること」も大きなテーマとなっています。若いメンバー、特に20代〜30代の社員に思い切った権限委譲を行い、経験を持った取締役が失敗を生暖かく見守れるような環境を作ること。時間をかけて正解を見つけるのではなく、できるだけ早く失敗し、どんどん改善していける体制にすること。それこそが、新体制の目指すFrogAppsのあり方です。そして、高橋の経験や知識は、その環境作りにこそ真価を発揮するのだと思っています。
 
人々と食の幸せな出会いを作り出すこと。
 
そのミイルのビジョンに向けて、FrogAppはより強力なチーム体制で全力で取り組んでいきますので、若いメンバーたちの頑張りや情熱に、これからも暖かい応援をいただけると幸いです。どうぞよろしくお願いします。
 
 
■こういう社長交代があってもいいと思うんです
ベンチャーの創業社長がこのタイミングで社長を交代するのは、おそらくかなりレアなケースかと思います。創業社長は力の続く限り経営者の座にとどまって、会社の成長に尽くすものだというのが一般的な考え方でしょう。実際、投資家の皆さんからも、驚きの反応があったことは事実です。
しかし、子供の成長を考えれば、幼稚園の先生からスタートして、やがて小学校の先生、中学高校、そして大学の教授と、そのステージに応じて先生が替わっていくのと同じように、会社だってそのステージに応じて経営者が変わるという考え方もあってよいのではないかと、僕は最近そう思うようになりました。FrogAppsという会社も、ミイルというサービスも僕の思いからはじまり、今ではユーザーの皆さんや社員のみんなの思いに支えられるものに成長しました。
 
その視点から、自分の思い入れとか肩書きを一旦横に置いて、客観的に会社の成長を最優先に考えると、そのときそのときのフェーズにふさわしい経営者に成長を託すという選択肢はあってよいのではと思います。
 
もちろん、こんなことはどんな会社でもできることないでしょう。私が高橋という共同創業者を得られたことは、奇跡のようなものだと感じています。こうして素直に尊敬でき、全力で信頼でき、何の心配もなく社長の座まで託すことのできるようなパートナーを得られるなんて、そうそうはあることではありません。
私たち二人は、時に本当の兄弟と間違われるくらいに似ています。二人とも同じ趣味を持つだけでなく、ときに着てくる洋服が上から下までお揃いになってしまうことがあるほど、性格的や考え方から価値観、美意識に至るまで共通するところがあまりに多く、僕にとってはまさに「兄さん」といえる存在です。また仕事における考え方も実に共通していながら、僕にはないスキルや経験を山ほど持っています。これほど素直に共感し尊敬できる相手は、そうそうはいません。
そういう人と共に創業できたこと、そしてこうやって社長のバトンを渡すことのできる相手がいることは、本当に希だし、恵まれていることなのだと思っています。
そしてこの縁を、僕自身の僥倖を、ミイルにも活かすことができれば。
今回の社長交代が、ミイルにとって大きな飛躍になることを心から信じています。
  
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今回も、写真を撮ろうと思い立って並んでみたらこんな感じに…
 
★★★
 
「で?社長を降りて、お前はこれからどうすんの?」と思われる方もいらっしゃると思いますので、そちらも少しだけご報告させていただきます。まだ現時点では公表できないことが非常に多いので、また時が来るまで詳細は乞うご期待なのですが、ひとまず現時点でのお知らせをいたします。
 
FrogAppsと私が出資して3月1日に子会社を設立し、私はその子会社の社長に就任しました。社名は「株式会社フロッギー」。名前からもおわかりいただける通り、FrogAppsの弟分という立場です。
これからは、FrogAppsの取締役を続けながら、主にはフロッギーで新規事業の立ち上げに取り組む予定です。
 
このフロッギーという会社は、ミイルとは違う角度から過去数年間温めてきた「あるアイデア」を具現化することを目的としています。事業の内容はまだ詳しくご説明できないのですが、飲食店が永く抱えてきた大きな課題を解決したいという、私自身の過去の経験に基づいた、きわめて泥臭いサービスを提供することとなります。
 
これからのFrogAppsとフロッギーは、血を分け合った兄弟として同じ理想やビジョンを掲げながら、同時に全く違うルートから、どちらが早く頂上にたどり着けるかを競い合うライバルのような関係になっていくことでしょう。
そしてそれぞれのサービスがそれぞれのルートでの登頂に成功し、二つのサービスが繋がったとき、ミイルと新サービスはかつてないグルメソリューションを世に提供できるはずです。
 
外食産業とネット業界の仲立ちとして、飲食店がお客様と共にハッピーになれる仕組みを提供すること。そして日本の食文化をもっともっと豊かにしていくこと。それは僕個人のここ数年の一貫したテーマでもあります。
そしてフロッギーはその実現に向けて、飲食店のあり方を根本から変えるような革新的なサービスを目指してがんばっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 
なお、こちらの詳細についてはまた追ってきちんとご案内させていただきますので、機が熟すまでしばらくお待ちくださいませ。
あ、ごく少数ながらメンバー(エンジニアさんとデザイナーさん)もこっそり募集していますよ。興味のある方は hitoshi [at] frogy.jp までご連絡くださいね。

【レビュー】「スローカメラ」としてのX-E1の魅力

相変わらずソニーのRX1は良いカメラです。もうね、ほんと大好き。
 
でも、RX1をメインに使うようになって、改めてその魅力に気づいたカメラがあります。それがフジフイルムのX-E1です。
なんというか、ジワジワ良さがにじみ出てくるんですよね。
これは一言でいうと「現代のスローカメラ」なんだと思います。


 
 
X-E1は全然ダメだ!という理由
で、そのX-E1ですが、用途を間違えると最悪に使いづらいカメラになります。最新のデジカメで、これほど被写体を選ぶカメラも珍しいでしょう。その理由は単純で、X-E1は「すごく遅い」んです。
まず筆頭はAFの遅さです。ファームアップして改善したとは言え、それでも他社のミラーレスカメラに比べると、もう絶望的に遅いです。これで走り回っている子供の写真を撮ろうとしても、いつまでもAFが迷い続けてしまって、ほとんど使い物になりません。
もう一つ遅さはEVFの遅さ。OVF(光学ファインダー)だけでなく、他社製ミラーレスのEVFと比べても、明らかに表示タイムラグがあるんですよね。EVFを覗きながら「今だ!」とシャッターを切っても、全然間に合わない。つまりEVFで見えているのは、コンマ何秒か過去の画像なんです。これも動きモノを撮るには致命的と言えるでしょう。
遅さはさらにあって、それは「メモリカードへの書き込みの遅さ」です。何枚か立て続けに撮影すると、あっという間にビジーになってしまいます。基本的にこのカメラで連写するようなことは、考えない方が良いでしょう。
 
ちなみに、AFで言うと、AFエリア選択がものすごく使いづらいのも欠点として指摘できると思います。AFエリアの選択ボタンが液晶モニターの左側一番下にあって、被写体に向かってカメラを構えながら簡単に変更ができないんですよね。レンズを支えている左手を外して、AFボタンを押して、さらに右手の十字キーでエリアを選択する。X-E1は基本的に使い勝手をよく考えたデザインになっているのに、ここだけは実用的でなくて残念です。
 
でも、AFの速度を要求されない風景や、MFで撮る接写なら、このカメラの評価は180°変わります。もうね、このカメラの吐き出すうっとりするような絵と言ったら。その美しさ、その精細さは、フルサイズセンサーを積んだ5D markIIIにも決して劣らない、いや、場合によってはそれらを凌駕していることだって少なくありません。
 
だから、このカメラは動体を機敏に追いかけて高速連写でバシャバシャ撮るのではなく、一つ一つの被写体にじっくり向き合って、一枚一枚大切に写真を撮るような、そういう使い方が向いているんですよね。
それこそが、僕が「スローカメラ」と感じた所以です。
 
 
色を最も美しく表現するカメラ
とにかく、このカメラの最大の魅力はその「色」にあります。
僕はほとんどのケースでフィルムシミュレーション「ベルビア」または「Pro Neg」で撮影するのですが、このモードで出てくるJPEG画像が、何とも言えない絶妙な色合いなんですよね。まさにフィルムメーカーの面目躍如といっていいでしょう。このカメラだけは、RAWよりも絶対にJPEGで撮りたい。そう思えるカメラは、X-Pro1/X-E1以外にはいまだ一つも出会ったことはありません。実際、RAWを自分で現像してもJPEGに敵わないんですから。
 
RX1とX-E1に共通して感じる「良さ」は、「フィルム(特にポジフィルム)みたいな発色をする」ことです。一般的に、フィルムで撮影した写真とデジカメで撮った写真を比べると、やはりどこかデジタルの方がペラッとした印象を受けることが少なくありません。画像を拡大すればデジタルの方が遙かに解像してるし、ディテールの精細さについてはもうデジタルは完全にフィルムを超えたと思うのですけれど、でも発色のリッチさ、色のコクでは、まだまだフィルムには敵いません。
しかし、この二台については、もしかしたらついにフィルムを超えたんじゃないか?と思うくらいの奥行きや深みのある発色をするんですよね。
 
例えばこの写真。
 
Meguro River, Today by Hitoshi NAKAMURA (hitoshi)) on 500px.com
Meguro River, Today by Hitoshi NAKAMURA
 
これは目黒側の桜を撮影したものです。レンズは60mm F2.4。
実はJPEG撮って出しではなく、若干コントラストをいじっているのですが、これだけ微妙な色合いなのに弄って破綻しないってのが、そもそも画像として素性が良過ぎるんだと思うんですね。
桜の淡いピンクと、川面の濃い青。川面の反射。
拡大すれば、桜の花びら一つ一つまでが見事に描写されています。
 
そしてもういっちょ。
SAKURA by Hitoshi NAKAMURA (hitoshi)) on 500px.com
SAKURA by Hitoshi NAKAMURA
 
同じく目黒川。(オリジナルのJPEGに対して、コントラストを強めにかけてあります)
若干の曇天とはいえ、壁と桜では結構輝度差があるのですが、どちらも見事に写し取っています。色が綺麗と聞くと、空の青や木々の緑をビビッドに発色するというイメージを持ちがちですが、このカメラの良いところはそれだけでなく、こういう繊細な色彩についても強いんですよね。ほとんどのショットにおいて、コントラストは多少調整することはあっても、色あいについては全く修正する必要がないというのは、それだけ素性の良い発色をしていることなんでしょうね。
 
フルサイズより繊細な描写力
次はX-E1の解像力を見てみましょう。
使っていると、僕はこのカメラは「女性を写しちゃいけないカメラ」なんじゃないかと思うことがあります。そのくらい、このカメラは被写体をディテールに至るまで見事に写しきってしまいます。
 
早速作例を見てみましょう。
これは僕の子供を撮影した写真です。ちょっとむくれてるけど。レンズはこちらも60mm F2.4。
A Gazer by Hitoshi NAKAMURA (hitoshi)) on 500px.com
A Gazer by Hitoshi NAKAMURA
 
この写真を拡大して、僕は本当に驚きの声を上げてしまったのです。
睫毛や眉毛の一本一本はもちろん、肌のキメから白目の毛細血管まで、こんなに繊細に写しきった写真を、僕は今までどんなカメラでも撮ったことがなかったからです。写真を等倍表示して、こんなにうっとりすることがあるなんて。
もしかしたら、肉眼で見るよりももっと繊細に細部が見えてるんじゃないか。そんな風にすら思う描写です。
 
等倍に拡大すると、髪の毛や肌が実に繊細に写し取られているのが分かります。しかもこれは、ソフトウェア的に不自然なシャープ処理はほとんどかけていなくて、レンズからの光をそのままセンサーが写し取った、そういう自然な描写です。
 
こういう作例を見ると、ローパスのあるフルサイズより、ローパスのないAPS-Cの方が細部の描写は上なんじゃないか?とすら思えてきます。
 
つまり風景には最強なんです
ということで、正しい被写体を選びさえすれば、X-E1はハイエンドの一眼レフにも決して負けないカメラだと言えます。美しい風景、静物、(止まっている)人物などにじっくり向き合って、ゆっくりと一枚ずつ大切にシャッターを切る、そんな写真の楽しみ方を教えてくれるカメラだと言えるでしょう。
フィルムの時代は、撮影した枚数がそのままコストになっていました。だから、一枚一枚を大事に撮影していたのですが、デジタル時代になって、フィルム現像代を気にせず、何枚でも好きなだけ撮影できるようになりました。それは写真技術の上達にも繋がるし、良いことも多かったのではありますが、一方で一枚一枚の写真の重みは、フィルム時代よりずいぶん軽くなってしまったなあと感じます。
でも、このカメラを使っていると、昔のじっくり撮っていた頃の良さみたいなものを思い出すんですよね。被写体も選ぶし、撮影枚数も減るし、おのずと「当たり」の枚数も減るのですが、でもその中で「当たり」がモノにできたときの喜びは、他のカメラでは決して味わえない大きさがあります。
 
「愛されるヒーローに必要な条件は、分かりやすい弱点を持つこと」という話があります。スーパーマンのクリプトナイトとか、ウルトラマンのカラータイマーとか、まさにそれですよね。で、X-E1のAFのダメダメさも、むしろこのカメラへの愛着に繋がってしまっているのは、まさにそれなんじゃないかと思うのです。欠点のないカメラもいいんですが、たまにはこういうカメラがあった方が、撮影する行為がもっと楽しくなるというのも真実なんだと思います。
 
そういうわけで、僕は、しばらくの間は広角側をRX1に任せて、標準〜中望遠域をX-E1、150mmくらいからの望遠域をGH3という体制で楽しんでみたいと思っています。
 
ちなみに、新しいX100sを触ってみたところ、像面位相差センサーになったことで、AFは驚くほど早くて正確になっていました。多分、次のX-E2(?)では劇的に使いやすい、まさに欠点のない魅力的なカメラになるんだろうと思います。今躊躇している人は、じっと次のモデルの発売まで、数ヶ月待った方がいいかもしれませんね。
 

 

【レビュー】ソニーRX1が「メインカメラ」と「サブカメラ」の定義に問いかけるもの

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もう、僕はフルサイズセンサーを積んだカメラを日常的に持ち運ぶなんて、一生できないと思っていました。
 
5Dや5D markIIを鞄に突っ込んで毎日持ち運んでいた、若き日々は遙か彼方。電車や自転車に乗る機会が増え、それと反比例するかのように体力も落ち、肩痛や首痛も慢性的になり、もはやフルサイズ一眼レフを日常持ち運ぶことはほぼ不可能になりました。去年買った5D markIIIは、今ではイザというときの守り神のように、カメラ棚の奥にご本尊として祭られている状況です。ご開帳されるのは、月に一度あるかないか。
 
いきなり年寄り臭い話ですみません。
 
でもね、僕は本当はフルサイズセンサーを積んだカメラが大好きなんですよ!フルサイズ厨なんですよ!
ミラーレスばかり使うようになってしまった今でも、センサーサイズが大きいのは絶対的な正義だと思っています。
フルサイズセンサーのカメラに明るい単焦点レンズを付けて撮影する。その組み合わせでなければ絶対に写せない「空気感」みたいなものは、厳然として存在すると思っています。
古くはフィルムカメラの時代、コンタックスのGシリーズにリバーサルフィルムを詰め、ビオゴンやプラナーを付けて撮った写真をライトボックスで見たときのあの感動。
デジタルの時代になっても、5Dや5D2にツァイスやLレンズを付けて撮った写真は、やっぱり他のカメラで撮った写真と明らかに違うんですよね。
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これは5Dにツァイスプラナー50mm F1.4を付けて撮った写真。なんでしょう、このキラキラした描写は。
 
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僕が一番好きなキヤノンEF50mm F1.2Lで撮影。こういう絵が撮れるからフルサイズが手放せないのですよ…
 
そういうフルサイズならではの魅力は分かっていても、でもやっぱり重いものは重い。カメラが大きいから、荷物が増えるとカバンに入りきらなくて困ることだって少なくありません。
だから、もうフルサイズは本当に「勝負カメラ」だと割り切るようになりました。僕の日常のカメラはミラーレスのGH3やX-E1で、勝負をかけるときだけ、代打の切り札として御大5D3が登場する、というわけです。ミラーレスが「使える」ようになったここ1年は、特にその傾向が強くなりました。
 
それが、まさかこんなことになるとは。
 
 
■RX1を購入しました
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はい。RX1です。
発表当初は「フルサイズでコンデジなんて、AFが遅くて使い物にならないはずだ」「僕は50mm派なので、35mmだと広すぎるんだよね」とか、色々とネガティブな理由を付けてスルーをするつもりだったのですが、ちまたに出てくる写真を見て、やっぱり我慢できなくなりました。
 
だって、フルサイズが毎日持ち運べるなんて、まさに理想中の理想カメラじゃないですか!僕はそれをもう何年も待ち望んでいたはずのに、今さら買わない選択肢なんてあったんですか!という話です。
だから、ずっと売れずに大切に保存していたライカMPをついに売りに出し、それでRX1を購入することにしたのです。ライカMPにしても、RX1に買い換えられるなら本望というものでしょう。
 
 
■違和感
で、さっそくバリバリ使ってみました。すでにそれなりの枚数を撮影しているのですが、実は未だに違和感は拭えません。それはなにか。一言でいえば「このボディからこんな絵が出てくるのはやっぱり不自然」という違和感です。
まあピント面は薄いし、解像度は驚くほど高いし、高ISOでもビクともしないし、どんなに過酷な条件で撮影しても白飛びや黒つぶれが驚くほど少ないし。
そりゃ、考えてみるまでもなく、フルサイズセンサーを積んでいるわけですから、当たり前といえば当たり前なんですけどね。
でも、やっぱりそんな画像がこの小さなボディから出てくると、調子が狂います。
 
考えてみれば、僕自身「素晴らしい絵は巨大なカメラボディから生み出される」「大きいカメラの方がキレイに撮れる」という先入観がすり込まれているからなんでしょうね。
確かに、それは一面では真理です。ケータイよりはコンデジ、コンデジよりは一眼レフ、一眼レフよりは中判カメラの方が画質が優れているのは間違いありません。で、その僕の認識をあざ笑うかのように見事に下克上をやってのけたのが、このRX1なんだよなあと思うわけです。
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■「コンデジ」がメインカメラになる痛快さ
さらに面白いのは、この「コンデジ風情」が、今や僕のメインカメラになりつつあるってことです。
今までの常識は「大きいカメラ=メインカメラ」「小さいカメラ=サブカメラ」でした。それはもう、誰もが疑う余地のないほど当然のことです。
一眼レフをメインに使い、サブとしてコンパクトやミラーレスを使う。登板機会の多寡はともかく、やっぱりここぞという場面ではメインカメラ=一眼レフが登場し、それ以外の場面では軽快なサブカメラが活躍する。
これが今までの常識だったわけです。それは、フィルム全盛時代に高級コンパクト(Tシリーズ、TC-1、GRシリーズなど)がもてはやされた頃から今まで、全く揺らぐことはありませんでした。どんなに良くできていても、コンパクトは所詮コンパクト。いざという時に一番信頼できるのは「大きいカメラ」でした。
 
その常識が、RX1購入を境に僕の中でガラガラと崩れていきました。
気づけば、僕の中ではRX1が「メインカメラ」の地位を占めつつあるんですよね。これはすごいことです。革命的と言ってもいいんじゃないでしょうか。
だって、そこらで売っている倍以上の大きさのAPS-Cカメラはもちろんのこと、フルサイズセンサーを積んだ一眼レフだって、キットレンズ相手だったら、描写では決して負けないんですよ。こんなちっちゃいのに。
こんなコンデジ然としたカメラが、一眼レフと対等どころか、一番空気感のある写真が撮れるとなったら、そりゃ他のカメラの出番が減るのは当たり前です。
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■メインカメラを毎日持ち運べる喜び
RX1を買ってからというもの、毎日持ち運ぶカメラはRX1意外に考えられなくなりました。ついこの前まで、X-E1だ、GH3だと言っていたのがなんだったんだというくらい、RX1一択です。
だって、フルサイズセンサーですよ。下手したらフラッグシップのα99よりもトランスルーセントミラーとか余計なものを置いてない分、RX1の方が描写が良いとすら言われ、いわば35mm焦点域に限定すればソニー最高峰の実力を持った、そんなカメラがポケットに入っちゃうんですよ。
フルサイズセンサーを日常的に使うことを半ばあきらめていた僕にとっては、これ以上の福音があるでしょうか。またこうして、日々フルサイズのカメラを持ち運べるようになったこと。これを幸せと言わずしてなんと言えばよいのでしょう。
 
近頃は「望遠域が必要なとき」に限って、X-E1やGH3が出動するようになりました。もちろん、この辺のミラーレスの良さは、たとえRX1が登場しても色あせるものではありません。でも、もう広角系だったらミラーレスの出番はあんまり考えられなくなってきたなあ…
望遠やマクロ系に特化して整理した方がいいのかなあ…
 
RX1を評して「現代のコンタックスT3」という方もいるようです。確かにレンズのスペックなど、成り立ちはとても似ています。
でも、それではRX1の本当のすごさは半分しか表現できていません。
RX1のすごさはそんなもんではなく、あらゆる一眼レフも含めて、全てのデジタルカメラの中でナンバーワンと言えるほどの描写性能を持つ、モンスターカメラなんだと思うのです。
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■ちなみに使用感はどうなのよ
 
【AF】
買う前にさんざんAFが遅いに違いないとか腐してたわけですが、実際使ってみると、思った以上にちゃんと動きます。(期待値が低かったという側面も否定しませんが)
このAFのスピードを他の機種と比較すると、X-Pro1やX-E1とは(組み合わせるレンズにも寄りますが)同等かちょっと上。GH3やOM-Dにはかないません。動体はちょっと苦手。
 
【操作フィーリング】
いつもこだわるボタンやダイヤルの操作感ですけれど、レンズの絞りや露出補正などのダイヤルのフィーリングは抜群と言ってよいでしょう。良くここまで高級感のあるタッチにできたもんだと感動するレベルです。このタッチは、現在販売されているカメラの中でも最高の水準じゃないかしら。
一方で、背面の十字キーや各種ボタン類のタッチはちょっと残念。ブニブニしていて、あまり気持ちの良いクリック感がありません。ちなみに、このボタンのタッチは個体差があるようなので、これから買う方はしっかり触って確認した方がよいです。
 
【サムグリップよいね】
オプションのサムグリップを付けてみましたが、これ、期待以上に良いです。RX1は外付けファインダーでなく背面液晶で撮影することが多いと思うのですが、その場合は手ぶれがどうしても多発してしまいます。そこでこのサムグリップを付けると、多少なりともグリップが安定し、ぶれを最小限に抑えることができるようになります(と思います)。
取り付けると多少上下にガタ付くのが気になりますが、見た目的にもアクセントになりますし、なかなかよいのではないでしょうか。

ソニー サムグリップ TGA-1

ソニー サムグリップ TGA-1


 
【RX1のセッティングでは「周辺光量」の補正はオフ】
僕の好きなRX1のセッティングは、レンズ補正(周辺光量)の設定「オフ」です。
写真の隅々まで均質な絵を得たいと思ったら周辺光量も補正するべきなのでしょうが、フルサイズならではの「空気感」を味わいたいなら、この設定は絶対にオフです。
僕は、この設定ができるからこそRX1を買ったと言っても過言ではありません。
これをオフにするだけで、フォトショップで加工したのとは全く違う、レンズ本来が持つ独特の描写が得られるようになります。
RX1はただでさえ「写りすぎる」くらいの性能があります。その性能をむしろ、レンズの「味」を楽しむ方向に多少割いてあげてもよいのではないでしょうか。RX1は、ツァイスの「味」を十分に楽しむ余裕のある、そんなカメラだと思います。
 
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ということで、ソニーさんの蛮勇英断に感謝。よくぞ作ってくれました。このカメラはそう簡単にモデルチェンジできないでしょうが、ぜひ作り続けて欲しいものです。
 
おかげで購入以来、僕のカメラへの物欲は、パッタリと止まりました。
まあね、この満たされてしまった感がいつまで続くかは分かりませんが、もう少し画角が狭い望遠寄りのRX1とか、AFが爆速になったRX1とかが出てこない限りは、しばらくは心穏やかに写真を楽しめるようになるのではないかと思っています。
 
ソニー デジタルスチルカメラ Cyber-shot RX1(35mmフルサイズCOMS) DSC-RX1

ソニー デジタルスチルカメラ Cyber-shot RX1(35mmフルサイズCOMS) DSC-RX1

飯野さんありがとう

「ありがとう」なんて言葉は、相手が生きている間に、直接相手に言わなかったら意味ないんだよ。
そんなことわかりきってるのに、でも、結局ちゃんと伝えることができませんでした。ごめんなさい、飯野さん。
 
たくさんの人が、ブログでも、Facebookでも、そしてTwitterでもあなたへの感謝を表明しています。
飯野さんがどれほど多くの方に愛されていたか。飯野さんがどれほど多くの人たちに力を与えていたか。
僕にとっても、心から尊敬する飯野さんから「大切な友人」と認めてもらえたことは何より大切な宝物です。今僕がこうして仕事をできるのも、あなたから認めてもらえたことが何より大きな支えになっているからだと思っています。
あなたの大切な友人であり続けるために、もっともっと学んで成長しなければ、って、僕は心の中でずっと(心地よい)プレッシャーを感じていたんですよ。
 
★★★
 
飯野さんと僕が知り合ったのは2009年。Twitterでのひょんな会話がきっかけでした。
 


僕らはこの会話から意気投合して親しくなりました。そしてTwitterでなくメールで直接やりとりして、こんな言葉をもらいました。この一言は、僕は今でも忘れません。
 

いろいろ考え方の根本が近しそうで嬉しいです。
 
ありがたい出会いだ。
 
メシ食いましょう!

 
 
まさかあんな怪人有名人と二人きりで食事することになるなんて。
あの風貌、そして数々の勇ましい逸話を持つ彼を自分の店で迎えるまでの間、僕は期待感5%、恐怖感95%で、落ち着いて座っていられなかったことを今でも覚えています。
でも、実際に会って話をしてみて分かったのは、飯野さんは本当にとてもとても繊細で心優しい人だったということです。
僕が今まで会った中で、彼ほど頭が良くて、彼ほど優しくて、彼ほど繊細な人はいません。
 
今になって改めて思うのは、僕は彼の友人というより、結局はずっと飯野賢治という人の大ファンだったのだなということです。彼とは遊びでも仕事でも、数え切れないほどの会話の機会を持ちましたが、そのどれもが、僕にとっては笑いと驚きにあふれた「トークショウ」でした。fytoのオフィスに行くのは、本当に楽しみで仕方がありませんでした。結局僕はいつも彼に楽しませてもらっていたのでしょうね。彼のそんな「人を楽しませる才能」から力をもらっていたのは、僕だけではないはずです。
 
彼と話していると、仕事の打ち合わせでも、単なる世間話でも、驚くようなアイデアが次から次へと出てきます。いつだってユーモアにあふれていて、どんなに苦しい状況でも明るく前向きに笑って語れるようになれました。
 
例えば、震災で倒産の危機にあったウチのお店を支えようと企画してくれたのは、ヨシナガさんとの笑いにあふれたトークイベントの番外編「気になること。」の番外編であり、また「とんかつを立ち食いしながら踊るパーティ」でした。
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とんかつパーティでは、外食を自粛する気分が蔓延していたさなか「みんなで一緒に食事をしよう!」と呼びかけ、わざわざタクシーで機材を持ち込んで本格的なDJまでやってくれました。とんかつを頬張り、お酒を飲んでガハハと笑っていた彼の姿に、僕らはどれだけ勇気づけられたことでしょう。
どんなにつらい状況でも、人を楽しませることを忘れず、笑顔で切り拓いていく。彼が教えてくれたのは、そういう生き方でした。
 
誇張でもなんでもなく、飯野さんと出会ってから、僕の人生は本当に楽しいものになりました。僕が仕事をする目的の一つは「どうやって飯野さんに『中村さん、やられた!これ、すごくよいね!(-:』と言わせるか」だったといっても過言ではありません。
飯野さんとの出会いを「ありがたい」と思っていたのは、むしろ僕の方だったのです。
僕はいつも飯野さんに救われていたんです。
 
飯野さんと交わした会話は、Twitterを見返しても、メールを見返しても、今でも学ぶことにあふれています。
なんでもっともっと彼と話をしなかったんだろう。
オンラインから姿を消したときだって、なんでもっと無理にでも彼に連絡を取って引っ張り出そうとしなかったんだろう。
僕はこれからも、それをずっと後悔し続けるんだろうと思います。
 

 
実は(これは今まで誰にも話していなかったのですが)ミイルは僕と飯野さんの「シンクロニシティ」から生まれたサービスでした。
僕がミイルのコンセプトを何気なく飯野さんに見せたとき、「ちょっと待て、おい!それって!!」と言いながら興奮気味に見せてくれた一枚のシート。そこには、全く同じサービスが描かれていたのです。
もう、二人して驚いたことは言うまでもありません。
 
「うーーん、最近はクライアント仕事ばっかりだからさあ… 僕も久しぶりに自分でサービス作りたかったんだけどなあ… でも中村さんがやるんなら、じゃあ別のことでもやるかなー」
 
そう言って預けられたのが、今のミイルだったのです。
 
リリースしたあと、一緒にアプリを見ながら「うん。いいねいいね。これなら及第点。僕は滅多に人の作ったものに及第点なんて出さないんだけど、これなら60点はあげられる。でも、まだまだ弱いよ。ただの写真じゃダメなんだよ。もっともっと、人の手触りを伝えられるような、人の手垢が残せるような工夫をしなきゃ」と言われたのが、飯野さんから最後にもらった、ミイルへのアドバイスでした。
それ以来、僕もずっとそれを考えているけれど、でもまだその答えは見つかっていません。
そして、彼に「これでどうだ!」と胸を張って見せられるようになる前に、飯野さんはいなくなってしまいました。
 
でもね。
 
飯野さんにいつか「飯野さん、こういうことでしょ?ちゃんと飯野さんに認めてもらえる楽しいサービスにできたよ!」と報告できるように、ミイルを大切に育てていきたいと思っています。
待っててください。飯野さん。
 

 
本当は、彼とやりとりしたメールをブログで公開するのはルール違反なのかもしれません。でも、これだけはブログに書いておきたいと思うことがあります。それは、彼と出会ってまもなく、彼と二人で交わしたメールの一節です。
 
それは、今改めて読んでみれば、彼の強い思いが込められていたように思えてなりません。
彼が僕に興味を持ってくれた理由の一つがこのメールの、この一文にあるのだとしたら。もしそうだとしたら、僕は僕なりに彼の思いを受け継いで、そして僕なりの方法で、彼の思いを形にすることが、彼への恩返しなのかもしれません。
 

実は、僕は、前からずっと、場所の経営がしたいんです。
将来は、そうするのだと思います。
ホテルとか、レストランとか、レジデンスとか
いろいろ混ぜた、新しいカテゴリーの場所を作りたいんです。
「リゾートホテル」という言葉を作った人がいるわけじゃないですか。
その言葉が約束するもの、提供するものは、通常のホテルとは違って。
それと同じように、新しいカテゴリーを作りたい。
 
そんな流れで、2〜3年前に、旅館のリニューアルの仕事をやって
●●●(hitoshi注:念のため伏せさせていただきます)の仕事や
レストランのリニューアルをやったりしました。
 
(中略)
 
> 僕も、創業して10年経ちますが、飲食は枯れたように見える
> 産業だからこそ、大きなイノベーションの余地がたくさんあると思って
> いろいろと試行錯誤してきました。で、既存店もようやく
> 落ち着いてきましたし、またそろそろ何か新しいことを始めたいと
> 思っているところでもあります。
 
僕は、いっぱいイノベーションの余地があると思いますよ。
 
いつも思うんですけど
子どもが、ディズニーランドに行きたい!って思うように
大人が、「わーいつか行ってみたいなあ」と思えるような
場所って、例えば、ぜんぜんないじゃないですか。
特に東京にいると。
地方にいれば、ミッドタウン行きたいとかあると思うんですが。

 
彼の「将来は、そうするのだと思います」という言葉は、結局実現することはありませんでした。でもこの思いを、僕を始めとした多くの人たちが受け継ぎ、より楽しくてワクワクする世界を作ることに繋げていければ。
 
飯野さんには、いつも僕らには見えていないものが見えていました。彼には、他の誰もが作り出すことのできないものを生み出す力がありました。
確かに僕ら一人一人では、彼の才能には絶対にかないません。でも、みんなが少しずつ彼の思いを受け継ぐことができれば、いつかは飯野さんが思い描いた世界にたどり着けるのではないでしょうか。
 
★★★
 
飯野さん、本当に今までありがとう。
僕はあなたから多くを学び、たくさんの勇気と自信をもらいました。
僕が死ぬまで、あなたはずっと僕の目標でありつつづけるでしょう。
 
正直言うと、まだ、あんまり涙は出ません。お通夜に行って、飯野さんの写真を見たときにはさすがに涙が止まらなかったけど、でも、本当にあなたがいなくなった喪失感を感じるのは、まだまだこれからなのだと思います。
 
でも、あんまり泣いばっかりいてもしょうがないんだよね。
つらいときこそ笑うんだよね。大変なときこそ笑うんだよね。笑って、そして自分の道を拓いていくしかないんだよね。
 
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商標取ってないのに、勝手にTMとか付けてたのかよ… 今さら気づいた。笑った。